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ショートカット偏愛家が描く女の子が尊い!想像力を掻き立てられる絵に込めた思いとは

  • 2021年9月10日
  • Walkerplus

心情や物語を想像したくなる、ショートカットが魅力的な女の子のイラストがSNSを中心に話題を集めている。作者である「ショートカット偏愛家」ダニエルさんが描く女の子たちは、まぶしいほどチャーミングな表情で喜びを語りかけたり、時には切なげに何かを訴え、時には涙を流しながらも強い意志を見せる。

そんな見た人の心を掴んで離さない「ショートカットの女の子」たちは、いかにして生まれたのか。人生においての挫折や絵を描きはじめたきっかけなど過去を振り返りながら、ショートカットの持つ魅力、描く上で大事にしている「寄り添うこと」についてなど、たっぷりと話を聞いた。

■ファッションの道を挫折し、空いた穴を埋めるようにして絵を描きはじめた
――まずはイラストを描き始めたきっかけについてお聞かせください。

「2018年から描き始めて、翌年から現在の名義で本格的に活動を始めました。それまでは、中学生の頃から好きで憧れだった、ファッションデザイナーとして働いていたんですけど、挫折してしまって。デザイナーの仕事を辞めてからは、心の穴を埋めるように心理カウンセラーの勉強をしてみたりライターゼミに通ってみたりと、おもしろそうだと思ったら飛び込んでみる時期があったんです。ある日、そのライターゼミの最後の講義レポートで、4コマ漫画を描いてみたらすごく楽しくて。言葉で表現することに苦手意識がありましたが、絵なら自分のことを楽しく伝えられるんじゃないかなと。4コマ漫画を見てくれたゼミの先生にも背中を押していただけたこともあり、本格的に描き始めることにしました。好きだったファッションの仕事を辞めて何もなかった時期に、『夢中になれそうだ』という久しぶりの感覚になれたのが絵だったんです」

――絵を描くことは昔から好きだったのでしょうか?

「趣味程度ですが、子供の頃から描くのは好きでした。将来は絵を描く仕事をしたいなと思い美術部に入ったりもしていましたが、当時は今ほど選択肢を知らず、“絵を描く=画家”と思っていたので、難しそうかなというのと当時好きだった漫画の影響もあってファッションの道を志しました。ファッションデザイナーになれば、絵を生かせるかなと思ったんですけど、現実はそうでもなく。描くこと以上に、服や体の構造を考えたり、売り場での見せ方、着用する人のライフスタイルを考えたりと、総合力を必要としていたのでしばらく絵から離れた生活でした」

――そこから再び絵を描くようになり、デザイナーとしての経験も生きていますか?

「服を作ってきたという戒めも込めて、服に不自然なシワが出ないようにだったり、テーマやカラーなど勉強したことは生かせていると思います。また、心理カウンセラーや言葉の勉強をしてきた経験も活かせてるかなと。描く時も絵をSNSに投稿する時も、私の絵や言葉で誰かを傷つけるのは嫌なので、できる限り誰かに寄り添えるように、せめて私の周りでは嫌な思いをする人が減るといいなという思いにもつながっていると思います。見てくださる全ての方をカバーすることはできないかもしれないけれど、描くテーマやモチーフ、投稿する時の言葉選びひとつとっても、『こう言ったら、こう考えるかもしれない』という予想をしながら、気をつけています」

■「女の子の魅力を120%引き出してくれる」ショートカット好きが増えてほしい
――ダニエルさんの作品で象徴的ともいえるショートカットの女の子をテーマに描くようになったきっかけは?

「『自分の絵に特徴や個性を出したい!』と模索している時、自分の中にある“好き”を掘り下げて出てきたのがショートカットの女の子でした。その中で描いた『真夏の太陽』は、とにかく好きなものを詰め込んで描いてみた結果、初めてすごく大きな反響をいただけ作品です。この頃に、改めて自分がショートカットが好きだということを再確認することができて、“好き”を詰め込んだ絵をもっと描いていこうと思いました」

――ショートカットのスタイルは、昔から好きだったのでしょうか?

「中学生の頃に観た『17才 -at seventeen-』というドラマに、出演していた内田有紀さんのショートカットがめっちゃ可愛くて目覚めました。あまりに可愛くて自分も真似てショートカットにしたんですけど、とても快適で。ショートカット好きの原体験になっていると思います。ちなみに、私の中での“ショートカットの三大神”は、内田有紀さん、長澤まさみさん、平手友梨奈さんです!」

――ダニエルさんにとって、ショートカットの魅力とは?

「ショートカットは、女の子の魅力を120%引き出してくれると思っています。ショートカットというと、ボーイッシュなイメージを想像することが多いのかもしれませんが、女の子の体のラインやパーツの美しさをより引き出してくれていると思うんです。たとえば首筋、うなじ、鎖骨も頭がコンパクトになることでより魅力が増しますし、耳から顎にかけてのラインも女性ならではの繊細なラインが出てより素敵に。可愛いお洋服を着たり、可愛いめのメイクをしても甘くなり過ぎない、いい塩梅になるバランスも好きですね。なにより、乾かしたり髪の手入れが楽!結んだりするのはできないですけどアクセサリーで遊んだりできるのもいいですね。マメに切りに行かないといけないので美容院代が大変ですが…(笑)。女の子の魅力がより際立つと思うので、ぜひ試してみて欲しいなと思います。ショートカット好きな人が増えるといいなぁ…」

■世の中の感情に寄り添えるような絵を描きたい

――人を傷つけず「寄り添う」というお話もありましたが、描く上で他にも大事にしている点はありますか?

「物語や感情が聞こえてくるような人物を描きたいと思っているので、その人物にどんな人生の背景があってどんな感情を持っているのか、その子のプロフィールを考えて設定を自分のなかで作ってから絵に込めるよう意識しています。ですが、捉え方は人の数だけあると思うので、そこは自由に想像していただけるような余白を必ず残すようにしています。私自身も、漫画やドラマでキャラクターの背景や感情を想像するのが好きなので、描いた女の子のことを想像して楽しんでいただけるような絵にできたらと思っています」

――ここは気をつけている、という点もありますか?

「気をつけていることは言葉選びです。誰かを傷つけない、『世の中の感情に寄り添う』というテーマの他には、『きみとわたしに花束を』というテーマは必ずベースに置いています。絵を目にした時にハッピーな気持ちにつながったり、言葉にならない感情を包み込むように寄り添っていけたらいいなと思っています。服を作っていた時からそうなんですが、自分に自信がなくて『人に迷惑をかけてるんじゃないか』と感じることが多いので、せめて自分の描く絵だけは誰かに楽しいとか喜んだりとか、前向きな気持ちを抱いてもらえるものにしたいなと。あとは、流行りに流されすぎないように気をつけています。街で見かける女の子や雑誌、インスタやピンタレストの投稿からインスピレーションを得て、服装や表情、角度などどうして可愛く見えるのかを研究しながら絵に反映させているのですが、あくまでもそのまま真似て投影させるのではなくエッセンスにとどめて、どこでまでも自分の『好き』という気持ちに忠実に描くようにしています」

――これまで描かれた作品の中で、特にお気に入りの作品はありますか?

「今年の6月にたくさん反響をいただいた、ハンバーガーを食べている女の子の『どれだけ泣きたいこんな日も悲しいくらいに腹が減る』という作品です。プライベートも仕事も挫折をして彷徨っていた頃に、悲しくて泣いているのにお腹が鳴ったので『しょうがない、食べるか』と泣きながら食べた、あの時の自分を思い出して描きました。今置かれている現実はすぐにどうしようもなく、食べたからといって解決しないのですが…、それでも明日を生きるために食べてたんですよね。すると同じような体験をした方から、『今の自分だ』と共感のコメントをいただけて、このイラストが誰かの体験に少しでも寄り添ってくれていたことを実感できてとても嬉しかったです。またこのイラストは、描き始めてから一番たくさんの人に見ていただくことができました。『あと少しで“1万いいね”いくね!』と友人や絵師さん仲間、フォロワーさんが後押しのRTをしてくださったことにも感動しました。仕事の帰り道の出来事だったのですが、マスクの中が涙と鼻水でいっぱいになりました…!」

――特別な想いがこもっている絵には、言葉で表せないようなパワーが宿っていますね。

「マラソンの高橋尚子選手が、恩師にいただいたという言葉に感銘を受けてイラストにした、『何も咲かない寒い日は、下へ下へと根を伸ばせ。やがて大きな花が咲く。』という作品は、絵を描く上で本当に苦しかった時に自分を励ますように描いた大事な作品です。周りの人と比べては、伸び悩んでいる自分に落胆していたのですが、『いつか「花」が咲くために、今準備をしているのだ』と自分で自分を励ましながら描いていました」

――ヘアスタイルはもちろん、影の使い方や女の子が持っているアイテムも印象的ですよね。

「女の子が黄昏ている『Berry Very morning』という絵は、構図や女の子の表情含め『なんだか素敵な感じにできたぞ!』と満足感を持てた絵です。髪の毛の感じがそのまま影になった表現もお気に入りで、『そこに居る』という存在を現してくれる影にこだわりました。あと、期間限定のドリンクを求めて飲みに行ったのに前日に終了していた時の『めっちゃ飲みたかったのに!』という、素直な気持ちを詰め込んでいることもあってか、今でもお仕事で依頼をいただく時にこの絵のお話を例に挙げていただくことが多いです。自分が好きだと思ったものが、人にも伝わった絵だったんじゃないかなと思います」

■作品集「ショートカット図鑑」を出したい!「ショートカット=ダニエル」を目指して

――たくさんの反響の中で、特に印象に残っているコメントや出来事はありますか?

「イラストを見てくださった方から、『ショートカットにしたくなった』や『この髪型にします!』と言っていただけるのはとても嬉しいですね。フォロワーさんで、『自分もショートカットにしているけど、どうしても男っぽいイメージになっちゃう』という方がいて。でも私の絵を見て、『ショートカットって、こんなに可愛いんだ!』と思えたと言ってもらえた時は『ショートカットの子を描いてて良かったー!』と思いました。あと、男女問わず『ショートカットが好きだ』という方がフォローしてくださるのも嬉しいです。私の絵で誰かがハッピーになれたなら、それ以上に嬉しいことないですね」

――ショートカットへの想いが伝わったからこその嬉しい反響ですね!

「もう一つは、今はなかなか飲み会ができないので、『家飲みしたい!』という気持ちを反映して描いた、大好きな獺祭を手にした絵をSNSにアップした時のこと。実際に獺祭の広報の方から『一緒に飲みたい!』とコメントをいただけたのはとても嬉しかったですね。あとは、見えないところにあるほくろをチラ見せしたりすると、そこに気づいてくれた方のコメントも嬉しいですし、『好きすぎて語彙力なくなる』というコメントも『語彙力奪った!』と嬉しくなります(笑)」

――今後描いてみたいモチーフは?

「男性や女性に限らず、いろんな年代のキャラクターも描いてみたいですね。漫画だったり動画だったりもチャレンジしてみたい。そのためにも、いろんな人物やポーズ、背景のバリエーションも増やしていかなければと研究しているところです。あとこれはかなり公私混同していますが…、大好きな漫画『進撃の巨人』のキャラクター・ミカサを描くお仕事をオフィシャルでご依頼いただけるようになりたいです!ハリウッド映画化の時に描かせていただけるように頑張らなければと思っています…!」

――最後に、今後の活動の展望や意気込みをお聞かせください。

「いつか、自費出版でもショートカットの絵を集めた『ショートカット図鑑』のような作品集を出したいです!そして、広告や装丁画などもご依頼をいただけるくらいになれるよう腕を磨いていきたいと思います。そのためにも“ショートカットといえば、ダニエル”というところまで目指したいなと思います」

――“ショートカットといえば、ダニエル”と言われる日まで、これからもショートカットが素敵な絵を楽しみにしております。

「ありがとうございます。私自身、人生をかけていたほどの好きなことがなくなって落ち込んだりもしたけれど、また好きなことを少しずつ集めていくうちに、大切に思える仲間に出逢えたり、素敵な方々と繋がれたり、また夢中になれることを見つけることができたので…。今度は、私の経験や絵が、誰かの一歩を踏み出す力になれたり、寄り添えたり、ちょっとした幸せの一つになれるよう、これからも描き続けたいと思います」

取材・文=大西健斗

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