サイト内
ウェブ

「アイドル時代の経験は一生の宝物」、今井翼がフラメンコ「Golpe 2021」特別出演への意気込みを語る

  • 2021年6月8日
  • Walkerplus

2020年に芸能活動を再開して以来、NHK大河ドラマ出演をはじめ、ドラマに映画、舞台と活躍の場を広げている今井翼。2021年6月よりところざわサクラタウンで開催される、日本が誇る舞踊団「アルテイソレラ」の公演「Golpe」に特別出演する。“Golpe(ゴルペ)”とは、スペイン語で“打ち付ける、足をどんと踏み鳴らす”という意味で、フラメンコ独自の、足を大地に力強く打つ仕草を表す。フラメンコ歴15年の今井翼が見せる“Golpe”とは?彼にとってのフラメンコの魅力、表現者としての苦悩と喜び、そして、これまでとこれからのキャリアについて語ってもらった。

■スペイン人も認める舞踊団と一緒に踊る緊張感
――アルテイソレラ舞踊団と今井さんは、とても関係が深いと聞いています。この舞踊団の魅力を教えてください。

【今井翼】2007年にある企画でフラメンコに触れたことがきっかけで、弾丸でスペインのマドリードへ行きました。フラメンコに魅了された僕は、帰国後、アルテイソレラ舞踊団(以下、アルテイソレラ)の佐藤浩希さんに本格的に師事することになりました。アルテイソレラはスペイン人も認める舞踊団で、オーソドックスなフラメンコはもちろん、日本人の誇りを持って表現をする踊り手の集合体。例えば「曽根崎心中」など、浄瑠璃を題材にした演目も秀逸で、非常に評価されています。踊り手たちが自分自身で解釈し、それをさらに深掘りして踊っているところが素晴らしい。僕にとっては憧れの舞踊団です。

――前回に引き続き「Golpe」に特別出演されるとは、素晴らしいことですね。本公演への意気込みや抱負を聞かせてください。

【今井翼】俳優である僕が、舞踊団と真剣勝負でやらせていただけるということは、グッと緊張感が高まり、身が引き締まる思いです。どんな踊りでもそうですが、特にフラメンコは自身の感性、感覚、生き様などが色濃く反映されます。フラメンコの基礎をきちんと踏まえたうえで、自分なりの表現を肉付けしていくプロセスを大事にしたいと考えています。また、芸事は“目で盗む”ものです。あれだけの素晴らしい舞踊家さんたちとご一緒させていただくのですから、舞台袖から皆さんの踊りを見ている瞬間も貴重な時間になっています。何よりも、フラメンコはライブで見るべき芸術作品。とにかく劇場に足を運んで、生で見ていただきたいと思っています。

――4月に主演されたスペインの偉大な画家、フランシスコ・デ・ゴヤの生涯を描いたミュージカル「GOYA」でも、アルテイソレラの皆さんが出演されていますね。

【今井翼】はい。冒頭から、佐藤先生らのカンテ(歌)、パルマ(手拍子)、ゴルペが織りなす迫力のシーンで始まります。その爆発的なエネルギーと、日本にいながらにして、スペイン独自の濃密な匂いや空気感を感じられるのは圧巻のひと言…。アルテイソレラなしでは、僕のフラメンコは考えられません。

――今井さんがフラメンコを踊っている時、一番高揚する瞬間はいつですか?

【今井翼】踊っている時に、心が浄化されていくような、感情が腹の底からうわーっと込み上げてくる瞬間があります。フラメンコには、主に「怒り」「悲しみ」「喜び」の3つの感情表現があって、例えば、悲しみの中にもいろいろなバリエーションが存在します。ゴルペで単に足を踏み鳴らすだけでなく、「どんなことがあっても立ち止まってたまるか!」というもがき苦しむ思いなど、さまざまな感情とともに踊るんです。フラメンコは、その人の半生、生きてきた道が、踊り手にしか出せない“シワ”となっていくもの。だから、僕なりの“シワ”が踊りに寄せられたらいいですね。

――そうなると、フラメンコは年齢を重ねた踊り手のほうがいいように思いますが…?

【今井翼】とても体力を使う踊りなので、スタミナ的には若い人の方がいいかもしれません。ただフラメンコの最大の魅力は“味わい”。スペインのタブラオでフラメンコを見た時、ものすごい恰幅のよい中年の女性が踊っていて、誰にも真似ができない“生”のエネルギーがあふれる踊りを披露していました。一般的に女性の踊り手が多いと思われがちですが、スペインには男性のスターもたくさんいます。男女平等で年齢も関係ない。僕も年齢を重ねて、味わい深い踊りを披露できたらと思っています。

――今井さんはジャズダンスを最初に学んでいて、それが踊りの原点となっているかと思います。2つの踊りをやることの戸惑いやメリットはありますか?

【今井翼】ジャズダンスの場合、肘から腕を伸ばす動きがスーッとなめらかで、スタンス(足の構え)が広いのですが、フラメンコはその逆。関節の動きがカクカクしていて無骨な動きが多いし、スタンスも狭い。フラメンコを踊る時に、ジャズダンスのクセがどうしても出てしまう時があります。本来ならば、ほかの踊りのクセをつけずにフラメンコを習った方がよかったのかもしれません。それでも2つの踊りを知っているからこそ、ジャズダンスにフラメンコの味付けをすることもできますし、その反対も可能です。自由に踊っていい瞬間には、このアイデアが生きてきます。

■頭からつま先まで、全身を使った美しい踊りが好き
――今井さんは体を使った表現が好きなのですね。

【今井翼】映像でいえば、寄りのカットの中で心の機微を表現するのも大事にしています。でも踊りは、“寄り”ではなく、“引き”のシーンじゃないと、すべての踊りが見られません。だから、頭のてっぺんからつま先まで神経が行き届いていないと成り立たないもの。僕は元々美しい踊りが好き。フラメンコのような荒々しくて無骨な踊りの中にも、エレガントな要素が求められている部分では、とことん美しさを追求したいと思っています。でも、ただ美しいだけでもダメで…。繰り返しになりますが、フラメンコの魅力は“味わい”だと思っています。踊り手の情念、生き様がミルフィーユのようになっている。それをいかに表現するかは、踊り手の技量次第ですね。そう考えると僕はまだまだ、道の途中です(苦笑)。

――今井さんは一時期病を経験されましたが、フラメンコに救われたことはあったのでしょうか?

【今井翼】救われたというより、新たな気付きがありました。休養期間中に、やっと体を動かしても大丈夫だとなった時に「もう一度基礎からやってみよう」という気持ちになれたことが大きかった。それまでは、仕事の目的のためという部分が大きかったのですが、シンプルにフラメンコの“いろはの「い」”からやってみようとなりました。これからもフラメンコを踊っていく中で、この気付きはとても貴重になるはず。基礎というのは、ベテランになろうと忘れてはいけないことですから。

――以前はアイドルとしての活動も数多くされてきましたが、フラメンコやそれ以外の仕事に生かされている部分があれば教えてください。

【今井翼】たくさんの人に注目されている、という自覚を持った大切な時期でした。今はその自覚がより一層強くなっています。多くのファンの方の支えがあったことも感謝の気持ちしかありません。現在、俳優として再出発していますが、これまでの活動の僕も紛れもない“今井翼”であることに変わりがない。今の僕を形作っている、血であり、肉であり、骨となっています。

――「Golpe」の公演が行われるところざわサクラタウンでは、“今井翼×角川食堂”のコラボメニューが登場しますが、「昔ながらのポークカレー」「パエリアとガスパチョのゴルペセット」「スペイン風ティーセット」の3点は、どのようなアイデアから生まれたのでしょう?

【今井翼】「カレーはスペイン料理じゃない!」というご指摘もあるかと思います(笑)。実は角川食堂のカレーの器に感動したのが、カレーメニューの提案のきっかけです。普通のカレー皿って平たいタイプが多く、残ったカレーソースは、お皿を傾けないとすくえなかったり、縁にカレーが付いたりしますよね。だけど、角川食堂のカレー皿は、深さや角度にこだわっているから、お皿を傾けなくても、最後までソースをすくうことができるし、縁にカレーが付かず、見た目がきれいなんです。これはとても画期的!あのお皿を開発した方に敬意を表して、そしてお皿の感動をお客様とも共有したくて、カレーを提案させていただきました。

――なるほど。さらには、パエリアにしても、米ではなくパスタを使った「フィデウア」にしたのは、こだわりがありそう。

【今井翼】僕は麺類、特にパスタが好きなので、あえてフィデウアにしました。通常のパエリアがバレンシア地方の郷土料理ならば、フィデウアはカタルーニャ地方の料理。おっしゃるとおり、お米ではなくパスタを煮込むもので、汁を吸いきってパリッとした焦げ目ができるのが特徴的です。僕はこれが大好きなので、提案しました。

――今井さんは、普段から料理をされるんですか?料理の楽しみを教えてください。

【今井翼】スペイン料理に関しては、自宅に人が集まった時に作る程度ですが、普段の食事も作っています。料理の醍醐味は、完成形をイメージして、そこから工程を逆算すること。仕事と同じなのです。料理は手際が大事なので、完成形を100%近くにするためにも、どの時間でどの工程を行うかをイメージするのが好きですね。

■年齢を重ねることは楽しみでしかない
――今年40歳とひとつの節目を迎えたわけですが、これからどのような仕事の領域に挑戦されたいですか?

【今井翼】僕は年を重ねることをまったくネガティブに捉えていませんし、むしろ楽しみにしています。若い時から培ってきたものがその人のスタイルになって、その人にしかないものが存在している、そんな男性になりたい。俳優としても踊り手としても中心に立つだけでなく、脇に立つようなポジションから目標に向かっていく経験もしたいですね。

また、自分にとって何が必要で、何が不要かも明確になってきました。物と心、両方で断捨離ができるようになってきたのです。そんな中、改めてフラメンコは自分にとってなくてはならないものであることを再認識しました。ほとばしる情念、己の生き様を、もっと渋みを持って表現したい。それができる年齢になってきたことにワクワクしています。

――熱いパッションを渋く表現するのは、ある意味難しそうですが、酸いも甘いも噛み分けて、いろんな経験をされてきた今井さんならば期待できます。最後に、コロナ禍ではありますが、「Golpe」の公演を楽しみにしているファンの方へメッセージをお願いします。

【今井翼】「Golpe」は、昨年のところざわサクラタウンのこけらおとしとして行われた演目です。僕にとって思い入れのあるステージに今年もまた立てるというのは、とても感慨深いです。アルテイソレラの皆さんの足を引っ張らないように、本気で挑みたいと思います。ぜひ公演に足をお運びください!


※記事内の価格は特に記載がない場合は税込み表示です。商品・サービスによって軽減税率の対象となり、表示価格と異なる場合があります。

撮影=あべまさや
取材・文=東野りか、水島彩恵
衣装協力=ALLSAINTS、GARDEN TOKYO
スタイリング=渡邊奈央(Creative GUILD)

あわせて読みたい

キーワードからさがす

gooIDで新規登録・ログイン

ログインして問題を解くと自然保護ポイントが
たまって環境に貢献できます。

掲載情報の著作権は提供元企業等に帰属します。
Copyright (c) 2024 KADOKAWA. All Rights Reserved.