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歴代「銀魂」映画はなぜヒットした?ワーナー宣伝担当が「コンテンツとして至高の領域」と語るワケ

  • 2021年2月19日
  • Walkerplus

「週刊少年ジャンプ」で連載された人気マンガ「銀魂」(著:空知英秋/集英社)。そのラストをベースにしたアニメ映画『銀魂 THE FINAL』が、1月8日より公開中だ。公開初日には、Twitter上で「#銀魂は永久に不潔です」がトレンド1位を獲得するなどお祭り騒ぎに。15年続いたアニメ銀魂史上3作目の映画にして、最速で興収10億円を突破した。そこで、アニメ・実写映画の宣伝プロデューサーを歴任し、多彩な宣伝施策でファンを湧かせてきたワーナー・ブラザースの大木麻友子氏、菅野泰史氏にインタビューして、その人気の秘密を紐解いた。

ワーナー・ブラザースと銀魂は、これまでにアニメ・実写合わせて5つの映画作品でタッグを組んだ。菅野氏は、アニメ銀魂『劇場版 銀魂 新訳紅桜篇』(2010年)と、『劇場版銀魂 完結篇 万事屋よ永遠なれ』(2013年)の宣伝プロデューサー。福田雄一監督による実写版『銀魂』(2017年)で、菅野氏とともに宣伝活動を担った大木氏は、バトンタッチを受けて、実写版『銀魂2 掟は破るためにこそある』(2018年)の宣伝プロデューサーとして活動。本作『銀魂 THE FINAL』でもその役を任せられた。

■リピーターに愛されたアニメ映画と、“何でもあり”の文化に支えられた実写版

――はじめに、これまでのアニメ映画2作品についてうかがいたいと思います。いずれも興収10億超えの大ヒットでしたが、決め手は何だったのでしょうか。

【菅野】一言でいうと、“コンテンツの力”にほかならないと思っています。もともと「ジャンプ」の人気タイトルで、テレビアニメ化もされて男性ファンのみならず女性ファンもしっかりとついていたので、映画の宣伝においてはそのポテンシャルを損なわないように心がけました。

「何回観ても楽しめる」というところも強みだったのかなと思っています。例えば、「完結篇」でいうと、ギャグの手数の多さがすごいですよね。5年後の世界で銀さんが目覚めると、周囲のキャラクターたちがそれぞれ意外な姿で現れる。5年の間に何が起こったのかということが、1個1個丁寧なギャグの積み重ねになっていて、とにかくアイディアの総量がすごいなと。

――『完結篇』は、未来の江戸で原因不明の病が流行するというシリアスな舞台設定でしたが、銀魂らしくギャグシーンも満載でしたね。

【菅野】舞台挨拶などでお客さんと会話すると、誇張なしで「10回観た」という方もいて。入場者特典のようなリピーター増加施策よりも、映画本編そのものが何度観ても面白かったというのが、成功の理由だったと思います。

――次に実写版「銀魂」についてですが、マンガの実写化という、原作ファンには非常にシビアに見られる難しい挑戦ながら、大きな成功を遂げました。

【大木】マンガ原作の映画はこれまでにもいくつか担当していたのですが、そのなかでも特に「銀魂」は、プロデューサーも監督もキャストもみんな心から銀魂のことが好きで、真摯に前向きに実写化に取り組んでいたんです。その気持ちが脚本やキャスティングのすべてにほとばしっていましたし、現場にお邪魔した私たちもひしひしと感じていました。なので、宣伝においても、そのピュアな気持ちを伝えていくということを大事にしていました。

【菅野】銀魂ってよく、“何でもあり”って言うじゃないですか。江戸の空に宇宙船が飛んでいたり、原作者が作中に登場したり、キャラクターが「ジャンプ」やアニメのことについてメタフィクション的に語ったり。実写映像化がとても難しい題材だったと思いますが、作り手がそういった根本的な部分での「銀魂らしさ」というところを忘れずに製作したのが、お客さんに伝わったのだと思います。

■銀魂ファンにとっての“卒業式”、「号泣した」という感想がすごく多かった

――『銀魂 THE FINAL』は、どのような狙いで宣伝活動を行ってきたのでしょうか。

【大木】アニメ銀魂の完結作ということで、「銀魂ファンの人たちが、最後をどう迎えるか」を考えた結果、「『卒業式』に行くような気持ち」で映画館に行ってもらえるといいなと思ってプランを練りました。学校でも、最終学年というのは、今まで見ていた校舎がすごく愛しくなったり、友達と一緒に思い出を振り返ったりして、すごく特別な年になると思うんです。そんな気持ちと、銀魂の最後はリンクするなと感じました。なので、はじめに「バイバイ、銀さん」というキャッチコピーを設定して、最後を銀魂らしく終えていくということをすごく意識していました。

――公開前から公開後にかけてのさまざまなしかけの中で、特に反響の大きかったものはありますか。

【大木】反響の大きさというと、やはり“あの”入場者プレゼントになりますね(笑)。でも、既にいろいろなところで書かれているので、他の話をさせていただければと思います。

――映画の公開初日0時に、公式Twitterの呼びかけにファンが応え、「#銀魂は永久に不潔です」がトレンド1位になったことも印象深いです。

【大木】銀魂はTwitterとの相性がものすごく良い作品で、情報解禁すると、ファンの人たちがとても主体的に盛り上がってくれるんです。これはほかの作品ではあまりない現象で、銀魂ファンの熱意を感じました。ファンの方それぞれに好きなキャラクターやエピソードがあり、笑いや人情、アクションといった中での好きな要素があり、「自分の好きな銀魂」を表現するために、そういった関わり方をしてくれるのかなと思っています。

なので、例えば銀さんの誕生日である10月10日に、予告編・ポスタービジュアル・主題歌などを一挙に発表するといったように、ファンにとって特別な日に情報解禁を行い、話題を最大化できるようにしていました。

――公開後のファンからの反響について、印象的だったものはありますか。

【大木】予告編を解禁した段階からですが、実際に映画を観た方からも「泣いた」「号泣した」という感想がすごく多かったです。「これが最後だとわかっていて観る」というところと、映画自体がものすごく感動できる作品になっていて、お客さんもそう感じてくれたからなのかなと思います。本当にすばらしい最後の映画でした。

■原作、アニメ、実写、一丸となってのヒットは「空知先生以外にはなしえなかった」

――アニメ映画、実写映画の両方を、同じ会社・同じ宣伝担当が手がけることによるメリットはありましたか。

【大木】まず、実写版を2人で担当したときには、菅野さんがそれまでアニメ銀魂の劇場版をやられていて、私は「るろうに剣心」などのマンガ原作の実写化作品をいくつか担当していたので、ちょうど2人で1つになれたというポジティブな感覚がありました。

【菅野】大きかったのは、宣伝担当というよりも、製作委員会がアニメと実写の映画でおおむね共通していたことですね。そのため、実写版とアニメ版とで横断した宣伝施策がとりやすくなりました。例えば、アニメのアフレコの現場に実写の宣伝マンが訪ねていって、声優さんの宣伝用の音声収録をさせていただくのにも、スムーズに許可取りができたりとか。

【大木】今回の映画の場合は、実写版が幅広い層にヒットした後だったので、実写で銀魂を知った層、いうなれば銀魂のライトファン層が絶対にほしいじゃないですか。原作ファン、アニメファンとは、年代や特性、銀魂の好きなところが少しずつ異なるその層に、いかにアニメ映画に入ってきてもらうかということを考え、実写版に出演されてアニメファンからも人気だった佐藤二朗さんにナレーションをお願いしたりしました。

――銀魂は、原作、アニメ、実写が手に手を取り合ってひとつの“銀魂ワールド”をつくり上げていて、そのどれもがファンに愛されている稀有な作品だと感じます。

【大木】空知先生のたまものですね。先生がいらっしゃったからこそできたことというか、空知先生以外にはなしえなかったことかなと思います。

銀魂における「空知先生からのメッセージ」って、ファンにとって本当に何ものにも代えがたいものじゃないですか。「実写化するときなんていうんだろう」「完結するときなんていうんだろう」「映画観てどう思ったんだろう」と、ファンのみんなが空知先生の言葉を待っていて、それを見て自分の心の準備をするんです。

実写化が発表されたとき、空知先生が“泥船”(※)と言ってくださったからこそ、ファンの方たちが実写版をちゃんと楽しみにしてくれたと思いますし、あのメッセージがなければ、実写版を大ヒットさせるのは無理だったと思います。尊敬でしかないです。

※「メンバーが豪華だろうと原作が原作ですから基本泥船。全員銀魂と一緒に死んでもらう事になります」とコメント

【菅野】娯楽として強いなと思うのが、シチュエーションコメディ的な作品でありながら、巨悪を倒すという「ジャンプ」らしいしっかりしたカタルシスもあること。そして、空知先生は“人情もの”を描くのが上手だということです。「笑って泣いてアツくなる」、三拍子そろったコンテンツですよと、いまどきてらいもなく大々的に言えるような作品だからこそ、マンガやアニメ、実写といったさまざまなメディアでお客さんを楽しませ続けることができるのかなと思います。

銀魂って、唯一無二じゃないですか。空知先生っていう作家の個性がすごく出ていて、それがお客さんが作品を愛し、キャラクターを愛しているっていうところにも繋がっていると思うんです。お客さんがキャラクターのことを実際に生きている人間のように愛してくれるっていうのは、コンテンツとしては至高の領域というか、なかなかできないことで、そこをやり遂げているところに銀魂の強さはあると思います。

――これから先、銀魂で予定しているプロジェクトはありますか?

【大木】ないと思いますよ!これが最後という風には言っていますので。

――最後に、ファンの方へのメッセージをお願いします。

【大木】劇場の大きなスクリーンで銀魂を観るという機会はもう、少なくともしばらくはないと思いますし、ストーリーはもちろん、映像や音楽もすべて“映画スケール”になってるので、まだ観ていないという人はぜひ映画館で観てほしいですね。もう観てくださったというファンの方も、まだまだ公開は続くので、ぜひ過去最高記録を目指して(笑)、何度でも観ていただきたいです!

※新型コロナウイルス(COVID-19)感染症拡大防止にご配慮のうえおでかけください。マスク着用、3密(密閉、密集、密接)回避、ソーシャルディスタンスの確保、咳エチケットの遵守を心がけましょう。

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