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“ガンダム模型”を期間限定販売できる「当日版権」てなに?夢の『1/100 サイコミュザク』をガレージキットで具現化

  • 2020年10月16日
  • Walkerplus

「C3AFA TOKYO」は、毎年8月に幕張メッセ(千葉市)で開催される日本最大級のガレージキット・キャラクターグッズの総合イベント。今年は新型コロナウイルスの影響により10月17日(土)と18日(日)の2日間、史上初のオンラインイベントとして実施される。そこで今回、ウォーカープラスの新企画「ウォーカービズ」では、同イベントで「1/100 MSN-01サイコミュ高機動試験用ザク」のガレージキットを販売するSUPERNOVA DiGiTAL DESiGN・小松憲史さん(@Supernova_DD)を取材。知っているようで知らない「ガレージキット」のこと、 “ガンダムの模型”を期間限定で販売できる「当日版権」の仕組みについて聞いた。

■欲しくても存在しなかった『大きいタコザク』を立体化

――ガレージキットとはどんなものですか?

「プラスチックで作られたプラモデルと違い、『レジン』という樹脂などで少数生産される組み立て式のキットのことです。個人からメーカーまで個性的なキットが販売されていて、最近では3Dプリンターで作られたガレージキットも出てきました」

――ガレージキットの魅力とは?

「プラモデルでは発売されなさそうなレアなアイテム、例えば設定画だけあってアニメ本編には出なかったものや、クリエイターの個性が光るアレンジや造形であったり、メーカー製のプラモデルとは一線を画したラインナップが魅力です。また、販売数が少なく再生産も稀なため“一期一会”という希少性も人気です」

――ガレージキット製作をはじめたきっかけを教えてください。

「私は自動車部品の品質保証をする会社の経営に携わっていて、3D CAD(3次元コンピュータ支援設計)による製品設計などをしています。売り上げの波が大きい自動車産業と並行して、昔から趣味としていたプラモデルやホビー製品を開発、販売したいという夢がありましたが、いきなりプラモデルの生産は資金面など高いハードルがありました。そこで、個人的に客として通っていた『ワンダーフェスティバル』や『C3AFA TOKYO』などのガレージキットを販売するイベントに出展をし、そこから足固めをしたいと思い参入を決意しました。本業の3D CADの経験と技術、そして趣味で培った人脈などを生かせるのではないかと考え進めましたが、メインバンクにホビー事業を納得してもらうのは大変でした(笑)」

――サイコミュ高機動試験用ザクを選んだ理由は?

「1970年生まれの私は、1980年代のガンプラブームの洗礼をもろに浴びた世代です。当時、人気が高かったMSV(モビルスーツバリエーション)は、箱絵のかっこよさもさることながらガンダムの世界観をより深めてくれる存在として、私が“ガンダム沼”にハマるきっかけになりました」

――ガンダムの生みの親・富野由悠季監督は、MSVがガンダムの世界観を広げ、作品にリアリティを与えたことで、ガンプラを“子供向け”だと見ていた大人のモデラー層もブームに取り込んだと認めています。

「私もMSVの“世界観”に魅せられた1人です。中でもこの『サイコミュ高機動試験用ザク』は、足がなく8本のロケットブースターが付いていることからファンの間で『タコザク』と呼ばれ人気がありました。当時『タコザク』も1/144スケールでキット化されましたが、残念ながら1/100サイズではキット化されていません。ガレージキット製作にあたってなぜこのザクを選んだかと聞かれると、欲しくても存在しなかった『大きいタコザク』が欲しい!という気持ちが心の奥底にずっとあったからだと思います」

■“当日、その場限り”で販売を許可するのが「当日版権」

――イラストレーターの3inchさんにガレージキットのデザインを依頼した理由は?

「『タコザク』の資料を探そうとネット検索をしていたら、MSをオリジナルの解釈でリファインして描いているイラストレーターの3inchさんを見つけました。『タコザクを立体化したいんですが…』とダメ元でお願いしたところ、OKをもらいプロジェクトをスタートしました」

――ガレージキットの販売について「当日版権システム」という制度があると聞きました。これはどんなシステムなのでしょうか。

「ガレージキット展示即売会における、簡易的なアマチュア向け商品化許諾制度です」

――ガンダムに限らず、世に出た作品を商品化するときにはその作品の権利者に許可を貰わないと商品化できません。その権利を“期間限定”で取得するということでしょうか。

「通常は版権を持つ人・会社などと交渉し、契約書を交わしたうえで使用料を支払う、という流れですが、個人が多く参入するガレージキットの世界では、そのような作業が参入の大きなハードルとなります。そこでイベント運営会社などが申請の代行を行い、個人でも商品化しやすいようシステムを作り、イベント会場でのみ販売を許可するという形で生まれたのが『当日版権』という仕組みです。文字通り『当日、その場限り』で販売を許可するというもので、通常では個人が版権をとるのは不可能なキャラクターも、こうして権利者の特別の厚意のもと販売できるわけです」

――今回紹介している「サイコミュ高機動試験用ザク」も、当日版権の制度の元で販売されるんですね。

「この『タコザク』は、17日(土)から開催される『C3AFA TOKYO 2020』にて販売されるものですが、今年は新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、オンラインでの開催に変更されました。『機動戦士ガンダム』の版権はこの『C3AFA TOKYO 2020』でしか許諾が下りないため、開催が決まったときは心から安堵しました。

■“常識を見直す”「ガレージキットにも新しい流れを作りたい」

――「当日版権システム」の許可をとる際にはどのような苦労がありますか?

「まずは著作権者の権利を侵害しないことが最大のルールになります。厳密な規定の元、申請から販売まで期日を守って、間違いを起こさず、かつ誠意をもって進めなければなりません。商品がそのキャラクターのイメージを大きく壊さないことを意識しながら開発するのも大変でした。長い時間をかけて開発しても、版権元の許可が得られなければ本末転倒なので、不許可になるかも…と不安を抱えながらの開発・試作作業は精神的にハードな部分でもありました。また今年は新型コロナウイルスの件もあり、開催そのものがなかなか決まらない不安の日々で、どうなってしまうんだろうと危惧をしていました。2次申請まで終わり版元様からの許諾通知が来たときは本当にうれしかったですね」

――小松さんが制作したガレージキットの“強み”は何でしょうか。

「3D CADと3Dプリンターをフル活用して設計、試作を行っている点が当社の強みです。職人技が必要な原型製作工程(複製の元になるモデル)を可能な限り減らし、ガレージキット未経験の弊社社員でも原型を仕上げることができるようにしました。それと従来のレジン製の部品に加え、3Dプリントで生産した部品も加えることで、レジンでは表現が難しかったパーツを加えることができました」

――確かに、ガレージキットには素人が立ち入れないような雰囲気があります。

「今までのガレージキットは上級者向けで、その割に組み立て説明書も簡素すぎてわかりづらいものばかりでした。そこでフルカラー写真やCGを用いて、ガレージキット初心者でもストレスなく製作できるよう配慮しました。これらは普段製造業で作業指示書やマニュアルを作っていた経験が生かせたと思います。“常識を見直せ”というのが私個人の信条でもありましたので、ガレージキットにも新しい流れを作れたらうれしいです」

――本作の一番見てほしいポイントは?

「注型(量産品)を担当してくれたRCベルグさん(静岡市)による驚異の量産技術!ですね。RCベルグの社長さんによれば、今回のタコザクは非常にチャレンジングしがいがあり、難しかったけれどとても楽しかったとおっしゃってくれました。RCベルグさんの注型技術がなかったら『タコザク』は世に出せなかったかもしれません。そんな、情熱と技術のぎっしり詰まったキットとなりましたので、ぜひ手にして欲しいと思います」

【1/100 MSN-01サイコミュ高機動試験用ザク】
2020年10月17日(土)、18日(日)の『C3AFA2020マーケットプラス』で限定50個発売予定。
※事前に販売サイト、キャラアニへの登録が必要。

取材協力:SUPERNOVA DiGiTAL DESiGN(@Supernova_DD)

(C)創通・サンライズ

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