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沖縄の復帰50年をブックガイドで振り返る良書が誕生

  • 2022年8月18日
  • 沖縄島ガール

2022年、沖縄が日本に復帰して50年となる節目となる年に、このたび、「復帰50年 沖縄を読む 沖縄世はどこへ」(ボーダーインク)が発行された。

「復帰50年 沖縄を読む 沖縄世はどこへ」は、アジア太平洋諸国の間に“友愛”の絆を創(つく)ることを目的に設立された「東アジア共同体研究所 琉球・沖縄センター」が編著者となり、県内外の50人がそれぞれの立場から復帰50年の年に沖縄を読み解くためのおすすめの書籍を紹介するブックガイド。

I章から「東アジア共同体研究所」の理事でジャーナリストの高野孟氏が核心を突く問題提起をする。それは、「復帰」と「返還」という言葉の使い方について。つまり、高野氏によると、「復帰の主語は、沖縄あるいは沖縄人である」とし、「返還の主語は米国ないし米占領軍」となるという。

さらに、復帰当日である1972年5月15日の午前0時1分から東京の外務省で開かれた日米合同委員会での“5・15メモ”の存在を綴った上で、「県民の期待の大きさから見れば遥かに後退したマイナスの地点から、『復帰後』を始めるしかなかった」と強い言葉で見解を示している。

この高野氏の気持ちのこもった言葉を受けた上で、改めてこの50年を考えることは沖縄県民のみならず、日本人として非常に意義深いことであると考える。

そして、II章から「復帰50年 沖縄を読む」と題した50人のブックガイドが始まる。

沖縄近現代史家・伊佐眞一氏は沖縄の“自立”について論じた上で、「政治家や役人、経済人にだけ有用なのではない。沖縄で生活をしているすべてのひと、少なくとも沖縄人と沖縄に愛情をもつ人間はぜひ座右においてほしい」と屋嘉宗彦氏の「沖縄自立の経済学」(七つ森書館)を推薦する。

その屋嘉も登場し、本を紹介している。沖縄の現在の貧困問題の一要因とされている基盤となる製造業が育たなかったことの背景として、日本とアメリカから「膨大な外部資金が沖縄に注ぎ込まれ」たものの、「1960年代の沖縄は、その資金の大半を消費的経済活動のために費消して日本の高度経済成長を上回る発展を遂げる」が、「沖縄の高度成長は見るべき生産基盤を後に残さなかった」ことを指摘。こうした「復帰後の50年で沖縄が失ったもの」を学ぶべき書として、琉球銀行調査部がまとめた「戦後沖縄経済史」(琉球銀行)を挙げる。

ほか、沖縄への愛を「『沖縄の覚悟』が足りない」と強い言葉で表現した名桜大学非常勤講師の与那覇恵子氏は来間泰男氏の「沖縄の覚悟」(日本経済評論社)を推薦。宮古島市の市議会議員・下地茜氏は沖縄県民としてのアイデンティティを考える上で影響を受けた嶋津与志氏の「琉球王国衰亡史」(平凡社)と奥野修司氏の「ナツコ 沖縄密貿易の女王」(文藝春秋)をレコメンドしている。

今回の企画は、お笑いタレントの小波津正光氏、染織家の中野夢氏、アスリートの譜久里武氏らさまざまな立場の人がそれぞれの意見を綴っている点、また、復帰50年の歴史そのものではなく、“ブックガイド”という企画にしたことで重過ぎない構成になっている点も読者の幅を広げることになりそうだ。

「復帰50年 沖縄を読む 沖縄世はどこへ」
発売中 1,540円(税込) ボーダーインク

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