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コロナ禍の今だからこそ読みたい「宝島」がいよいよ文庫化!

  • 2021年7月24日
  • 沖縄島ガール

沖縄の戦後史を描き、第160回直木賞を受賞した真藤順丈(しんどう・じゅんじょう)氏の小説「宝島(上・下)」(講談社)の文庫版が7月15日に発売された。

「宝島」は、戦後の沖縄を舞台に書き下ろされた社会派青春小説。第160回直木賞のほか、第9回山田風太郎賞、第5回沖縄書店大賞を受賞した。

物語は、3部構成。「第一部 リュウキュウの青」は1952〜1954年の2年間、「第二部 悪霊の踊るシマ」は1958〜1963年の5年間、「第三部 センカアギヤーの帰還」は1965〜1972年の7年間の出来事を描く。

激しい沖縄戦が終結した後、まさに「だれもが食うや食わずの毎日を送るなか」、アメリカ軍の基地に侵入して物品を奪う、いわゆる“戦果アギヤー(沖縄の言葉で「戦果を挙げる者」の意味)”の若者たちを主人公に、戦後の沖縄の混沌とした社会、そんな社会に何となく違和感を覚えながらも生きる人たちの描写が勢いのある文章でつづられる。

文庫版発売にあたり、著者の真藤氏は、今回のコロナ禍の現政権の対応を題材に「なんだろうこの既視感は?」と、何気ない、だからこそ、強烈なインパクトを伴ったコメントを寄せている。

「現在の政治はそのまま、戦時から沖縄を敷石にして、基地を押しつけ、民意を無視して辺野古の海に土砂を投じる姿勢と完全に重なってくる」…真藤氏は日頃からこれほどまでに沖縄と真摯に向き合っている。だからこそ、この「宝島」を生み出すことができ、全国で、特に、沖縄県民に受け入れられたのだ。

それでも、ただ熱を持って沖縄を見ているわけではなく、「アメリカーへの不平不満の矢面に立たされる警官ほど、この島が“アメリカ世(ゆ)”にあることをたえず痛感している島民はいなかった」と、民衆とアメリカとの間に立たされていた警官こそ、じくじたる思いを抱いていたことにまで思いを馳せる。この冷静な視点がまた素晴らしい。

発売にあたり、7月26日(月)から10日間、沖縄限定で、真藤氏、ジュンク堂書店那覇店の森本氏、球陽堂書房メインプレイス店の長田氏が出演するテレビCMも放映される。

真藤氏は文庫版発売に寄せたコメントをこう結ぶ。「この閉塞した社会の中で自分が存在する価値を見出したい、何かをやらかしたいと願っているあなたにこそ読んでほしい」。

コロナ禍を経た今、発売される「宝島」の文庫本。この時代だからこそ、再び反響を呼びそうだ。

「宝島(上・下)」
発売中 (上)924円、(下)715円(共に税込) 講談社文庫

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