春の「水辺」そして「食」……と言えば、好きな人はピンときますよね。そう、食べられる野草の季節です。春の七草に始まり、関東地方では3月の中盤にもなるとセリやノビル、カラシナにヤブカンゾウなど、水辺を歩いていると、田んぼの畔や川原に生える野草を摘んでいる人に出会います。時にはタンポポを根ごと収穫している人も……。
私はと言えば、毎日のように川辺を歩いてはいるのですが、さほど野草には詳しくもなく、またどちらかというと料理も不得手な性質なので、あれもこれもと食べることはありません。ただ、ノビルだけは幼い頃から父に収穫に連れられたり、美味そうにビールのつまみにしていたのを見ていましたので、毎春、太いのが生えていると気になって数本抜いては味噌につけて食べています。
ノビルは漢字で書くと野蒜。「蒜」とはニンニクのことで、分類学上ではノビルもニンニクもともにヒガンバナ科のネギ属に含まれる種であり仲間です。葉にはニラやワケギのような香りがあり、丸くなった部分(鱗茎)はエシャレットのような辛みが特徴です。
根の周りをシャベルなどである程度掘ってからゆっくり引き抜くと、プツプツッと細い根が切れてスポッと鱗茎から抜くことができます。無理に急いで抜くと切れてしまいますので、できるだけゆっくりゆっくり引き抜き抜くのがコツ。ここがノビル採りの醍醐味です。
水洗いして味噌をつければ、エシャレットのようなおつまみになりますが、エシャレットよりも野性味が強いのか、たくさん食べるとお腹を壊してしまうことも……(ニンニクも同じですよね)。お腹が心配ならば少し煮てみるのも手。煮れば葉も美味しく食べられますし、鱗茎は辛みも取れます。もちろん天ぷらも美味です!
収穫が楽しく美味しいノビルですが、時折、間違えて葉の似たスイセンやタマスダレを食べてしまい食中毒を起こしてしまう事故があります。ノビルは葉からニラやネギのような匂いがしますので、それを手掛かりにすれば間違えることはほぼないかと思いますが、はじめは周りで採っている慣れた人に教えてもらうと安心です。
また、田んぼの畔など農地は避け、農家の人の作業のじゃまにもならないよう注意しましょう。採りすぎず、野の幸を少しいただくぐらいの気持ちで楽しんでくださいね!
出典:わぉ!わぉ!生物多様性プロジェクト Facebookコラム
(2020年4月3日)
https://www.facebook.com/wow.wow.biodiversity.project/
※「わぉ!わぉ!生物多様性プロジェクト」は、公益財団法人日本自然保護協会とソニー株式会社が協働で実施しているプロジェクトです。
「わぉ!」という自然のおもしろさや不思議に触れたときの感動を多くの人に伝え、みんなで共有することで、自然を好きになってもらい、生物多様性の保全につなげていきます。