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【辺野古・大浦湾】生きものたちの物語~海草・藻場、泥・ガレ場 編~

  • 2018年10月17日
  • NACS-J

米軍基地移設に伴う埋め立て問題で揺れる沖縄県名護市の辺野古・大浦湾。
辺野古・大浦湾には、絶滅危惧種のジュゴン(※)をはじめさまざまな生きものたちが暮らしています。彼らは、辺野古の埋め立てが進めば犠牲になってしまうかもしれません。海の中でも、あまり一般に知られていない海草や泥場といった環境の生きものたちをご紹介します。
※ジュゴンの暮らしについては下記ページで詳しくご紹介しています。ぜひこちらもご覧ください。
■沖縄のジュゴンはどこにいる?
https://www.goo.ne.jp/green/column/nacsj_020.html
https://www.goo.ne.jp/green/column/nacsj_019.html

海草藻場の生きもの

沖から戻ってくるスクの群れ
 アイゴ類の仲間の幼魚(スク)は、孵化後は沖合でプランクトンなどを食べていますが、体長2cmほどになると藻食に変わるため、群れで沿岸に戻ってきて、海草藻場で海草に付く藻類などを食べるようになります。毎年旧暦6月1日の大潮に沖からやってくるスクの群れは、沖縄の海に夏の到来を告げる風物詩。この時期に採ったスクの塩漬け『スクガラス』は沖縄珍味として愛されています。

スクガラス(有光智彦)

モズクの赤ちゃんの発芽場所
 沖縄の特産品のオキナワモズク。自然の海では、「藻付く」の名前のとおり、藻や海草にくっついて成長します。潮通しの良い海草藻場の中で発芽し、そこから海草藻場の外側まで広がっていくと考えられています。

オキナワモズク(牧志治)

海草でカムフラージュ
 沖縄の食用ウニを代表するシラヒゲウニは、海草や海藻を食べて育ちます。写真のように体の上に海草をくっつけているのは、天敵である魚から見つかりにくくするためのカムフラージュだと考えられています。

シラヒゲウニ(牧志治)

葉の表面も大事なすみか
 海草の表面には、巻き貝をはじめ多くの生きものが暮らしています。写真右は2010年の調査で見つかったクサイロカノコ。鮮やかな黄緑色をした希少な巻き貝で環境省準絶滅危惧種です。

葉上貝類

命のゆりかご 海草藻場
 ジュゴンの貴重な餌場である辺野古・大浦湾の海草藻場の調査に、日本自然保護協会は2002年から地元団体や市民の方々とともに取り組んできました。辺野古沖の海草藻場は沖縄島で最大の藻場で、広い面積に一様の海草類が生えているのではなく、複数の種が混在する浅い場所や、ボウバアマモ類1種が密生する場所、水深が深くリュウキュウスガモが優占する場所などさまざまです。10年以上の調査の中で、一度04年の大きな台風の後ボウバアマモが減少しましたが、05年にはすぐに回復傾向となるなど、常に安定して一定の規模を保っていることも確認されました。こうした安定性と、変化に富んだ多様な環境が、海草藻場を生息場所などとして利用する生物の暮らしを支え、生物多様性を高めているのです。海草(牧志治)

 海草藻場はジュゴンの餌場になるだけでなく、さまざまな魚たちの産卵場所や稚魚の生育場所になり、モズクやウニなど私たちの食卓を支える生きものにとっても大事なすみかとなります。また、陸上の植物と同じように光合成をする海草は、二酸化炭素を吸って海の生物たちに必要な酸素を放出したり、しっかり根をはることで海底の砂が動かないように安定させるなど、海の生態系の中で重要な役割を果たしています。光が届くきれいな水質の浅瀬にしか生えない海草藻場は全国的に減り続け、保護が求められる貴重な場所となっています。

泥場・砂地・ガレ場の生きもの

歩くサンゴ!?正体はキクメイシモドキを背負ったスイショウガイ
 大浦湾の奥、川から流れ込んだ細かい泥がたまった海底には世界的にも珍しい『歩くサンゴ』が暮らしています。その正体は、キクメイシモドキというサンゴがスイショウガイという巻き貝の殻に付着したもの。キクメイシモドキは、ほかのサンゴが生息できない泥っぽい海底を好む変わり者で、ふつう岩などについて群体をつくります。もともと泥っぽい環境に強いサンゴが、スイショウガイの背中にくっつくことで泥に埋まることなく、泥の海底にまで生息範囲を広げていると考えられています。

スイショウガイとキクメイシモドキ_seaphoto

新種の宝庫? 深場の泥質海底
 大浦湾の大きな特徴のひとつが、湾内に水深30mを越える深い谷があることです。一般的にサンゴ礁海域では、サンゴ礁の内側は水深5mほどの浅瀬(礁池)になりますが、大浦湾では、湾奥から埋め立て予定地を含む辺野古崎にかけての岸には礁池がなく、岸から急に深い谷となっています。谷底は大浦川などから運ばれてきた栄養たっぷりの泥が積もった泥場。谷の上側斜面はイシサンゴの骨格が積み重なったガレ場になっています。また、湾の中ほどの水深5~20mの範囲には砂地が広がっています。

泥場やガレ場、砂地は一見何もいないようですが、目を凝らせば、泥場や砂地特有の生きものたちがたくさん見えてきます。実際、大浦湾のこれらの環境では新種や日本初記録といった希少な生物が数多く確認されています。中でもオオウラユビピンノというカニや、シンノワキザシという小さな甲殻類の仲間は、世界中で大浦湾だけでしか確認されていません。サンゴ礁が発達した海域では泥質の海底環境そのものが少ないため、研究も少ないのです。まだまだ多くの未知の生物が潜んでいるかもしれません。

出典:日本自然保護協会会報『自然保護』No.547(2015年9・10月号)

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