サイト内
ウェブ
日本自然保護協会TOP

緑のgooは2007年より、利用していただいて発生した収益の一部を環境保護を目的とする団体へ寄付してまいりました。
2018年度は、日本自然保護協会へ寄付させていただきます。
日本自然保護協会(NACS-J)の活動や自然環境保護に関する情報をお届けします。

【辺野古・大浦湾】生きものたちの物語~サンゴ礁編~

  • 2018年9月12日
  • NACS-J

 米軍基地移設に伴う埋め立て問題で揺れる沖縄県名護市の辺野古・大浦湾。
 辺野古・大浦湾には、絶滅危惧種のジュゴン(※)をはじめさまざまな生きものたちが暮らしています。彼らは、辺野古の埋め立てが進めば犠牲になってしまうかもしれません。今回は、ほんの一部ですが、辺野古・大浦湾に暮らす生きものたちの姿をご紹介します。

※ジュゴンの暮らしについては下記ページで詳しくご紹介しています。ぜひこちらもご覧ください。

■沖縄のジュゴンはどこにいる?
https://www.goo.ne.jp/green/column/nacsj_020.html
■海の使者ジュゴン
https://www.goo.ne.jp/green/column/nacsj_019.html

世界最大級の 巨大アオサンゴ群集

 大浦湾でアオサンゴの大群集が見つかったのは2007年。群集は長さ50m、幅30m、高さ14mと世界的にも大規模で、天然記念物に指定する動きもあるほど立派なものです。

 アオサンゴはインド洋や太平洋の暖かい海域に分布し、沖縄島周辺は分布の北限域。日本では沖縄県石垣島の白保の大群集が有名ですが、白保のアオサンゴは水深1~3mほどの浅瀬に小さなまとまりで点在し、枝は板状の形をしているのに対し、大浦湾のアオサンゴは水深1~13mの斜面にひとつの塊となってまとまり、枝の形は円柱状。それぞれが潮の流れや波当たりといった環境に応じ特有の形状になっているのです。

 サンゴといえば産卵シーンが有名ですが、アオサンゴは雄サンゴが放出した精子を雌サンゴが受け取り体内受精して、卵ではなく赤ちゃん(プラヌラ)を産みます。生まれたプラヌラはしばらく雌サンゴの群体にしがみついて過ごした後、近くの海底に着地して自分の群体をつくります。この繰り返しでアオサンゴ群体は少しずつ広がっていくのです。ただ、これまでの研究で大浦湾のアオサンゴ群集は遺伝的に単一であることが分かっています。つまり、この大きさになるまでクローンで増え続けてきたということで、学問的にも注目されています。

写真1_アオサンゴ_牧志中井
▲大浦湾のアオサンゴ群集。右の写真は、8本の小さな白い触手を伸ばしプランクトンなどを捕るアオサンゴ。IUCNレッドリスト絶滅危惧Ⅱ類。


オスが子育て ネオンテンジクダイ

 大浦湾のユビエダハマサンゴの間に数匹の群れで暮らしているネオンテンジクダイ。雄が卵を口の中で孵化させ、稚魚をしばらく口の中で育てるという面白い習性を持っています。汚染されていない川の水が流れ込む静かな湾内にしか生息しないため、奄美大島から八重山諸島まで広く分布するものの、沖縄島では大浦湾のほかには報告例がほとんどありません。

写真2_ネオンテンジクダイ_岩本

クマノミたちのアパート? クマノミ城

 大浦湾の『クマノミ城』には、ひとつの塊状サンゴに数十匹ものハマクマノミが暮らしています。イソギンチャクと共生するハマクマノミは数匹でグループをつくることが多く、1カ所で数十匹も見られるのは珍しいこと。実は、ハマクマノミは雄から雌に性転換する魚で、グループで最も大きな個体が雌になり、その雌がいなくなると次に体が大きい雄が成長し雌になるという生態を持っています。クマノミ城のように密集している場所では一体どのようなグループ構造になっているのでしょうか? 調べてみれば、ハマクマノミの新たな一面が見えてきそうです。

写真3_クマノミ城_牧志

サンゴに産卵する コブシメ

 奄美諸島より南の海に暮らす大型のイカ、コブシメは、普段沖合で過ごしますが、秋から春にかけて産卵のためにサンゴ礁の浅瀬にやってきます。コブシメのカップルは口を合わせるようにして雄から雌に精子を渡し、雌はサンゴの枝に卵をひとつずつ産み付けます。生まれた子どもはサンゴに守られながら成長していきます。

写真4_コブシメ_牧志

共生藻からご飯をもらうヒメジャコガイ

 稚貝のころから周囲の石灰岩を溶かして穴を掘り、その穴から一生動くことなく暮らすヒメジャコ。こんな生活を可能にしたのは、外側に広げているタラコ口唇のような外套膜に、共生藻と呼ばれる単細胞植物を大量に住まわせているからです。共生藻が光合成でつくりだすエネルギーを利用して生きる、驚きの自給自足生活です。

写真5_ヒメシャコガイ_牧志


残された良好なサンゴ群集

 世界の亜熱帯・熱帯の浅い海に分布するサンゴ礁は、サンゴ類など石灰質の骨格を持つ生物がつくり上げた地形です。サンゴ礁の複雑な空間は魚類や貝類、甲殻類などさまざまな生物のすみかとなり、世界の海に生息する動物の4分の1はサンゴ礁域に暮らしているといわれるほど生物多様性の高い環境です。

 辺野古・大浦湾は、外洋に面した場所から湾奥までさまざまな環境があり、環境ごとにハマサンゴ類、コモンサンゴ類、キクメイシ類、ミドリイシ類、アザミサンゴなど多くのサンゴ群集がとても良好な状態で生き残っている、沖縄島では数少ない海域です。

 それぞれのサンゴの産卵も確認されていて、ここが沖縄島東海岸のサンゴの供給源となっていると考えられています。沖に近いハマサンゴの丘には、白化現象を生き延びた多くの種類のハマサンゴが広がっています。健全なサンゴ群集の指標となるスズメダイ類が群れ、沖合からやってくるカマスやヒメジの群れも見られます。ユビエダハマサンゴ群集には、冬にはコブシメのつがいが産卵に訪れ、一見岩のような塊状ハマサンゴ群集にも、赤や黄色、オレンジ色などのカラフルなイバラカンザシや、ウミシダなど多くの生きものが暮らしています。

写真6_ハマサンゴ_NACS-J
▲パラオハマサンゴ群集(左)とユビエダハマサンゴ群集の上を泳ぐコブシメ(右)。


出典:日本自然保護協会会報『自然保護』No.547(2015年9・10月号)

あわせて読みたい

キーワードからさがす

gooIDで新規登録・ログイン

ログインして問題を解くと自然保護ポイントが
たまって環境に貢献できます。

掲載情報の著作権は提供元企業等に帰属します。