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ユネスコエコパーク探訪まとめ

  • 2017年7月31日
  • NACS-J

自然保護のためユネスコエコパークの輪を広げ、深めよう

綾からはじまった移行地域

 ユネスコエコパークは、保護地域をつくるための世界的な取り組みとして1976年に始まり、日本には1980年に志賀高原、白山、大台ヶ原・大峯山、屋久島の登録から導入されました。その後2012年に綾、14年に南アルプスと只見が登録されましたが、特に32年ぶりの綾ユネスコエコパークの誕生は、日本の自然保護上重要な意味を持つものでした。
 ユネスコエコパークの大きな特徴は、生物多様性保全、自然と共生した持続可能な地域づくり、教育研究支援という3つの目的を実現するため「核心」「緩衝」「移行」の3つの地域を持つことですが、実は、80年に登録された4つのユネスコエコパークは移行地域がありませんでした。当時は奥山の保護が重視された時代で、登録申請も自治体ではなく国の主導で進められました。移行地域を持ち、自治体主導で誕生した日本初のユネスコエコパークが綾だったのです。
 世界自然遺産や国立公園など、従来の日本の保護地域の制度は、奥山や生物の生育生息地だけが指定されることが多く、生物多様性保全上重要な地域にもかかわらず、里やま、海岸、河川、湿地などが保護対象から外れてしまうという自然保護上の課題がありました。ユネスコエコパークは、人の暮らしと密接にかかわってきたそれらの地域も含めて登録することができる新たなしくみです。80年に登録された4つのユネスコエコパークも、14年以降、自治体主導で移行地域が追加・拡張され、今は全ユネスコエコパークで人の暮らしも含めた多様な取り組みが続けられています。
 ユネスコエコパークへの登録は、移行地域の存在以外にも、各自治体が国際的な枠組みを導入することで国内外とのネットワークができることや、取り組みがユネスコに定期報告されること、自治体の施策がユネスコエコパークの目的に沿って設定されるなど、自然保護上、大きな意味があると考えています。

自治体主導の強みを活かす

 ユネスコエコパークは、国主導で推進される世界自然遺産などと違い、市町村などの基礎自治体が主体となって申請・運用できることも大きな特徴です。世界のユネスコエコパークは多くが国主導で運営されていますが、日本では自治体主導で各地域で地域に寄り添った取り組みが進められており、世界からも高く評価されています。とはいえ、日本のユネスコエコパークの取り組みは実質的にはまだ始まったばかりです。登録されても既存の法的規制以外の規制がかからないため、登録しやすい反面、開発を規制するための担保がありません。地域住民と連携した活動不足や、限られた自治体の予算、担当者の人員不足など課題も多く、試行錯誤が続いています。
 皆さんがユネスコエコパークを訪れたら、ぜひ移行地域での取り組みに注目してください。日本における地域づくりでは、少子高齢化、野生鳥獣害、森林管理・耕作放棄、伝統文化の消失、教育など多くの課題がありますが、各ユネスコエコパークでは地域の自然や人財を最大に活かして課題に向き合おうとしています。その町の自然と景観を観察し、できればそこに暮らしている住民の方と積極的にお話しをしてほしいと思います。一般の観光者向けのガイドの人だけを頼るのではなく、町や集落を散策し、その地域の自然に合わせた生業や暮らし、知恵を読み取って「人と自然の共生」へのヒントを見出していただきたいと思います。

(日本自然保護協会エコシステムマネジメント室  朱宮丈晴)


出典:日本自然保護協会会報『自然保護』No.553より

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