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(Boulder)vol.4 ロッキー山脈国立公園 自然が教えてくれるもの

  • 2007年5月1日

米国コロラド州・ロッキー山脈国立公園

 北米大陸の背骨であるロッキー山脈と共に、コロラド州はその3分の2を山岳部が占める山岳州として知られていますが、その大自然とそこに生息する動植物たちとの出会いは人生観を変えるものであったり、日常の生活そのものを忘れて自然に還る時を与えてくれます。そしてまた、自然保護とはどうあるべきかということ考えさせてくれます。

ロッキー山脈

 ロッキー山脈国立公園は1915年1月26日にロッキー山脈の雄大な自然美を保護するために国立公園として設立されました。息を飲むような眺望を、青々とした湿地帯から過酷な天候にさらされて聳える標高4,000メートルを越える山々まで、標高差のある大自然の中で見ることができます。あの有名なグランドキャニオンを削りだしているコロラド川はこの国立公園に源泉を持っています。

高山植物

 6月〜7月には高山の荒い岩肌の間や傾斜部などの高山植物がいっせいに花を咲かせます。樹木限界線(ティンバーライン:標高約3,200メートル)より低い地域の森林地帯で見れる野草とは違い、それより高いツンドラ性気候に順応して育つ高山植物は背が低く地面にへばりつくようにして生きています。様々な環境の中で強く生き、短い期間にそれぞれの花を力一杯に咲かせる自然界の華を楽しむこともできます。まるで、何かを語りかけているかのようです。

アルパイン勿忘草
アルパイン勿忘草 - Eritrichum nanum

 右写真は標高3,500メートル前後で撮影されたアルパイン勿忘草。例えばこのアルパイン勿忘草ですが、冬は数メートルの雪が積もり氷点下何十度まで気温が落ちるような山肌の石の間に生えています。夏に向けて毛の生えた緑の葉を出し限られた水分を無駄なく集めて根に届かせ、空の色に負けないようなブルーに輝く花を咲かせています。ところで、大変厳しい気候の中に生えるこの花を、もし皆さんが抜いて自宅に持ち帰ったらどうなると思いますか。(注:実際には国立公園保護法で石一つとしても持ち帰ることはできないことになっています)この草にとっては、皆さんが楽だろうと思っている環境の方がずっと過酷であり枯れてしまうことでしょう。自然とそこに生きるものの姿とはそういうものなのです。

野生動物

公園とそれを囲む地域には、エルク大鹿(下の写真:雌を従え群れを守る雄エルク)、ミュール鹿、ヘラジカ、大角羊、黒熊、コヨーテ、クーガなどが生息し、空からは鷲や鷹などの猛禽類が小動物を狙っています。標高差で変わる気候に合った生態系がいくつも一緒になって一つのエコシステムを形成しています。

エルク大鹿
ElkまたはWapitiと呼ばれユーラシアでは赤鹿と呼ばれます。
学術名:Cervus elaphus

 秋になるとアスペンの黄葉が楽しめます。そしてこの燃えるような葉が辺りを染める頃にはエルクのメイティングシーズンに入り園内各所で覇者争いが始まるのです。その巨大な体格と角からは想像できないような甲高い声(ビューキング)で自分の位置を知らせあい挑戦者を受ける雄たちの戦いの舞台でもあります。あまり知られていませんが、エルク大鹿は、昔は平野に生息していましたが、人間の進出とともに森や山岳部に逃げ生き延びた動物たちなのです。彼らは順応、適応能力に長けていたため現在に至って生き延びましたが、当時いたであろう動物の中には追いやられていった新しい環境に慣れることなく絶滅したものもいたかもしれません。

ロッキー山脈国立公園の歴史

 アメリカ議会がこの国立公園設定を決定した時にロッキー山脈の景観と大自然そのものを保護することに重心をおきました。現在北米一高い尾根ハイウエイとして知られるトレール・リッジ・ロードや山岳登山道などのルーティング決定の背景には、自然に対するダメージを最小限に抑え人工物が出来るだけ周りの環境に馴染み溶け込むための配慮がなされています。それは水の流れを配慮したものや、野生動物の生態系を理解した上での植物圏の保護や移動ルートをふさがないようにした配慮などが含まれます。
 大自然を保護し子々孫々まで守り抜き、誰もが訪れることができるという国立公園の2つのモットーを基にして運営管理されています。

 エコシステムという言葉がありますが、自然が与えてくれた環境下で多くの動植物が生きている世界のことです。目に見えないようなバクテリアから、数百キロもある大鹿や熊までが、この世界の中で生きているのです。

小池清通

■ 筆者紹介
小池清通…写真家。
コロラド在住24年、ロッキーの自然を撮り続け、自らもLOHASなライフスタイルを実践している。アメリカ人に引けをとらない体格だが、繊細な心の持ち主で、食に関する思いも深い。
来年春、日本で個展が計画されている。
http://www.usa-japan.com/nature/


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