サイト内
ウェブ

Vol.24 阿蘇の草原を未来へつなぐ
LOHAS コンシェルジェ/奥山眞理子さん

  • 2013年2月1日

阿蘇の野焼き支援ボランティア


竹とクズのカズラで作る「火消し棒」


野焼きのための身支度をした奥山さん
 野焼きボランティアになるために2日間の研修を受けます。阿蘇の草原の特性や果たしている役割、野焼き支援ボランティアとしての心得、野焼きの手順、安全対策(危険が迫った時の対処の方法)などのレクチャーを受け、その後、火消し棒を作ります。これが野焼き支援ボランティアが使う道具です。竹とクズのカズラで作りますが、これがなかなか大変な作業です。
 野焼き支援ボランティアの仕事は、草を焼くのではなく山林など他の場所に火が燃え移らないように、草が激しく燃えた後の残り火を監視し、火消し棒でたたいて消していくのです。2日目は小高い丘で体験野焼きをします。
 野焼きは自然を相手に火を使う作業です。「風を読み」、「地形を利用」する能力が必要で、その技術は代々その地域で受け継がれてきました。ですから、地元の牧野組合の人しか「火入れ」はできません。ボランティアは「火消し」に徹します。

 奥山さんが初めてボランティアとして参加したのは、2011年の3月。当日、振り分けられた牧野は「小堀牧野」。阿蘇中岳の北側、仙酔峡ロープウェイの西側一帯の牧野です。
 8時半集合。この日は2班に分かれて1グループが12人余り。着用する衣服は綿製のものでなければなりません。他には皮の手袋。綿製の帽子かヘルメット。熱から顔を守るための厚手のタオルをかぶり、作業中は煙対策のためのゴーグルとマスクを着用します。本当に凄い恰好です。靴は底の厚い登山靴や、丈夫で山道を歩きやすい地下足袋など。荷物を入れるリュックも綿製。リュックの中には、飲み水、緊急消火用の水1リットル、予備の服、あめ玉、ライターなど。ライターは、炎が迫って来てどこにも逃げられない時、自分がいる周囲を焼き、そこに逃げ込み身を守るため。すでに焼けてしまった場所には火は来ないからです。

 

 


輪地切りという防火帯を作る草刈り作業


輪地切りの跡がくっきり見えています


火消し棒で作業する野焼き支援ボランティア
 身支度が整ったら、軽トラに乗って、現場まで行きます。風の向きが悪いということで、待つこと約30分。いよいよ地元の方が火を入れます。
 場所は傾斜地だったので、まず斜面の上の部分に火を入れ、すでに前年に作った防火帯を広げる作業。
 防火帯を作る作業を地元の人たちは「輪地切り」と言い、野焼きをする前年の夏から秋にかけて行います。隣接している山林などに火が延焼するのを食い止める役割を果たすスペースを作るために行う草刈りのことです。この作業がされていないと野焼きはできません。主に男性が刈払機を使って行います。

 斜面では、炎は下から上へ上がるため、上方の防火帯をより広げて、近くの山林や、別の牧野に火が燃え移るのを防ぐのです。パチパチとススキが燃える音がし始めると、ボランティアは一定の間隔をあけて並び、ススキが燃え上がり、いったん炎が収まった後のチョロチョロと燃えている残り火を、火消し棒でたたいたり、こすったりして移動しながら消していきます。消火には、火消し棒だけでなく20リットルもの消火用の水の入ったジェットシューターを背負い、消火する人も何人かいます。
 防火帯に沿って火が入れられ、斜面上部の防火帯を広げる作業が終わると、次はまた軽トラに乗って、下の方に移動します。

 下から火が入れられると、本番の野焼きの始まりです。いったん火がつくと炎は勢いよく上に向かって一直線に駆け上がっていきます。凄いスピードです。この時は、音もパチパチではなく、ちょうどテントに土砂降りの雨が打ちつけられるような音です。凄い音です。見る見るうちに下から上に草原が焼けて黒くなって行きます。そして、最初に燃やした斜面の上の部分まで達すると火はほとんど自然に消えて、一面真っ黒な世界になります。ボランティアは燃えた草原の周囲にまだ火が残っていないかを注意深く見て、炎が出ていたり、くすぶっていたりする場合、完全に火を消します。

 この日は、小さな谷のような地形の所からも火を入れましたが、その時は、燃え盛る時の炎の熱さも経験しました。緊張して臨んだ初野焼きも無事終了。体中が煙臭くて、マスクもすっかりネズミ色。汗もかきましたが、自然の中で作業をしたあとの気分は爽快でした。

 

 

 

 

キーワードからさがす

gooIDで新規登録・ログイン

ログインして問題を解くと自然保護ポイントが
たまって環境に貢献できます。