サイト内
ウェブ

中学生になり部活と友達に全集中。他のことが全ておろそかに…【小川先生の子育てよろず相談室】

  • 2022年10月4日
  • レタスクラブニュース


「うちの子のこんなところが心配」「私の接し方、コレでいいの?」子育ての悩みは尽きません。でもそのお悩みも、教育のプロの目を通すと、お子さんの個性や魅力を再発見するきっかけになるかも!?
教育家の小川大介先生が、子育てに関する悩みに対してアドバイス。回答文最後の「大丈夫!フレーズ」が、頑張っているあなたの心をスーッとラクにしてくれますよ。連載第119 回のお悩みはこちら。

【お悩み】

中1の娘についての相談です。中学に入学してから毎日とても楽しそうに学校に通っているのはいいのですが、今の娘の関心は友達と部活に全集中。それ以外はほとんど見えておらず、他のことの完成度がめちゃくちゃ低い状態です。例えば、英語の宿題で、テストのために対応しておくよう言われても、1回サラッとやるだけ。間違いがあってもOKで終わらせてしまい、できなかったところを何度も繰り返し完成度を高めるという作業を全くやりません。

これは勉強に限ったことではなく、ピアノの練習なども同様。もともとピアノは大好きで、以前は自分からよく練習していたのですが、最近はとても雑。全然弾けていないのに1回弾いて「よし、できた」で終わらせています。先日あまりにも目に余ったので、どうして反復作業や記憶の定着作業をやらないのか聞いたところ、「面倒くさい」の一言。それを聞いて私もカッとなり、「面倒くさいからってやらないと、得意なことも得意じゃなくなるし、得意じゃないことはできなくなるよ」とかなり厳しい口調で怒ってしまいました。その日は横に張り付いて弾けるようになるまで練習させてから行かせたところ、ピアノの先生に褒められたようで、本人はとても喜んでいました。そして「これからはがんばる」と言っていたので、もう大丈夫かと思ったのですが、私が目を離すとまた前の状態に逆戻り。反復作業をせず完成度の低いままで終わりにしています。

そんな調子なので成績もかんばしくなく、夏休みも学校の補習に呼ばれる始末。補習ではできるようになるまで見張られていたこともあり、一学期の内容はとりあえず合格点をもらえたものの、二学期に入っても適当に流して終わりにする学習スタイルは変わりません。このままではいけないと感じているのですが、学校からは中学生になったら子どもから手を放すよう言われていることもあり、どういう働きかけをすればいいか悩んでいます。(Sさん・42歳)

【小川先生の回答】

■手放すところと助けるところを見極める

そもそも「中学生になったから手を放す」というのは、ちょっと乱暴な考え方ですね。子どもによって発達成長のレベルは違うし、経験してきたことも、置かれている環境も違うもの。何歳だから手を放すなんて一律には言えません。手放していいところは放すけど、助けなきゃいけないところは助ける必要があります。おそらく先生も「何でもかんでも手を出すのはやめてください」ということを言いたかったのでしょうが、相手にする人数が多く、それぞれ度合いも違うため、「手を放しましょう」という具体性の欠けた表現になってしまったのではないでしょうか。もし、「全部を本人に任せましょう」という意味で言っていたとしたら、それは先生が間違い。「子どもが自立するために、一律全部に手を出すことからは卒業しましょう」が正解です。

そのため、手を放していいところと、そうじゃないところをちゃんと見極めることが大事になってきます。それが子どもの自立を促すための大人の基本姿勢になります。

■やれた経験を積み重ねて初めて習慣化する

そういった視点で娘さんを見た時、彼女に足りていないのは、目標設定とそれを実現するまでの行動計画を具体化するスキルです。つまり、「がんばる」と口では言っても、やり方がわからないから実現できないのです。そして、やろうとしてもできないことが続いたため、「もういいや」と投げてしまう速度が上がっている状態と言えます。だから気が向いたことしかやらないし、さらに言えば気が向かないと動けない体になってしまっています。

スキルというのは訓練しないと身につかないものですから、当面はついてやらせる必要があるでしょう。やれた状態を体験させることで、『行動の結果、完成でき、達成感が得られる』というプロセスを味わわせてあげましょう。やれた経験を何度か積み重ねて初めて、「面倒くさい」から「ちょっと大変そうだけどやろう」へと思考が変化していきます。ですから、ピアノで1回できたからといって、そこで手放してしまうのは時期尚早。自ら行動してやり上げるようになるには、最低でも20回は必要です。言われなくても当たり前のように直しをする中学生も、小学生の間に「直して良かった」という経験を、何百回と繰り返しているからできるのです。

■親のキャパや適性に合わせて、助けるところを選択

とはいえ、親も忙しいから、そんなに全部をつきっきりで助けてはあげられないですよね。それなら、何を助けるか絞ればいいだけ。「ママにもキャパシティの限界があるから、今月はピアノだけ助けるね。できるようになったら次は英語ね」というように、自分の助けてあげられるパワーが20しかないなら、20の範囲で助けてあげればいいのです。20の範囲で本人ができるようになるだけでも、ほぼ0に近い状態に比べれば遥かな進歩。そうやって少しずつ成長させてあげましょう。

また親にも得手不得手があるので、ご家庭の状況によってご主人と担当を分けたり、補習塾など外部の人にお願いするのも一案です。学習に取り組むのが当然の中に入ることで、家の中だとどうしてもいい加減で完了させてしまえるところも、いい意味での負荷をかけることができます。学校で補習をお願いできるようなら、相談してみるのもいいですね。親が一人で抱え込もうとしても無理だし、長続きもしないので、いろんな人の力を借りつつ、本人に習慣づくまでサポートしてあげてください。

小川先生からの「大丈夫!」フレーズ
『既に成功体験は実証済み。それを積み重ねればいいだけです』
ピアノの練習も学校の補習も、完成するまでがんばったことで、実際に成果を上げています。あとは、その経験をひとつひとつ積み上げていけばいいだけ。一度の成功で手放さずに続けていくことで、習慣化して自らやり遂げる力が育まれます。

回答者Profile


小川大介

教育家。中学受験情報局『かしこい塾の使い方』主任相談員。

京都大学法学部卒業後、コーチング主体の中学受験専門プロ個別塾を創設。子どもそれぞれの持ち味を瞬時に見抜き、本人の強みを生かして短期間の成績向上を実現する独自ノウハウを確立する。個別面談の実施数は6000回を数え、受験学習はもとより、幼児低学年からの能力育成や親子関係の築き方指導に定評がある。各メディアでも活躍。最新刊は『子どもが笑顔で動き出す 本当に伝わる言葉がけ』(すばる舎)。

小川大介の見守る子育て研究所YouTubeチャンネル、公式LINEアカウントでも情報発信中。

文=酒詰明子

キーワードからさがす

gooIDで新規登録・ログイン

ログインして問題を解くと自然保護ポイントが
たまって環境に貢献できます。

掲載情報の著作権は提供元企業等に帰属します。
Copyright (c) 2016 KADOKAWA Corp All Rights Reserved