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夫と妻、どちらの負担が重い? 令和時代のリアルな夫婦のモヤモヤに共感。『夫ですが会社辞めました』著者・とげとげ。さんインタビュー

  • 2022年9月25日
  • レタスクラブニュース



家事や育児など家庭内のことを主に担当する夫を意味する「主夫」。さまざまな家族の在り方が当たり前になってきたとはいえ、まだまだもの珍しい目で見られたり、ちょっと上の世代の人には受け入れられなかったり…。そんな「主夫」と「大黒柱妻」の一家の姿を描いた『夫ですが会社辞めました』。現代の夫婦が抱えるモヤモヤを描いて共感を呼び、WEB連載が累計2,000万PVを超え(2022年9月)、書籍化も果たした注目作です。

ご自身の経験や周囲の方々への取材をもとに描かれた物語の中には、思わず「わかる!」と言ってしまうような夫婦や子育てにまつわるエピソードが多々あり、読者からも共感を集めています。そこには、著者・とげとげ。さんの実体験も数多く含まれているようです。



「私ばっかり…」と感じたときの対処法は話し合い


──主人公の俊は、世間一般でいう“普通”のレールを歩めず、息苦しさを感じていますよね。とげとげ。さんの周りにも、そのような方は多いと思いますか?

とげとげ。さん「日常会話を通してでも、ある程度みんな息苦しさを感じているんじゃないかなと思うことはあります。それは『主夫』だけではなく、誰にでも当てはまることですよね。大なり小なり息苦しさを感じながらも、うまく繕って生活している部分はあるのではないでしょうか」



──「大黒柱妻」である沙月のセリフに「私ばっかり…」という言葉がよく出てきますよね。とげとげ。さんも「私ばっかり…」と感じることはありますか?

とげとげ。さん「今は夫がテレワークになったので家事を半々で分担していますが、以前はワンオペだったので、しょっちゅう『私ばっかり…』と言って喧嘩してきましたね(笑)。とはいえ、今でも、子どもの習い事のフォローや子どもの友達の親への連絡とか、“名もなき家事”と言われることは私がほとんどやっているので、『私ばっかり…』となる時があります。習い事や学校関連のことは、なかなか分担するのは難しいなと思います」

──そんな時は、どのように対処されていますか?

とげとげ。さん「とにかく話し合うことですね。コロナ禍で家族みんなが家にいて、家中がストレスであふれているような状態の時があったんです。その時期は、子どもたちから『離婚しないでね』と心配されるくらい夫と衝突していました(笑)。そんなときに話し合っていて気付いたのは、完全に平等は無理だよねということ。私が6:4で自分が多く家事をしていると思っていても、夫は7:3で自分の方が家事をしていると思っていたんです(笑)。相手の気持ちがわかって、お互いに感覚のズレがあるということに気付けただけでも『まぁ、いっか!』ってなれたので。特に対策は立てられなくても、話し合うことは大切だと思います」



──なるほど!確かにストーリーの中でも、俊と沙月が話し合うことでよい方向に動き出していきますよね。

とげとげ。さん「そうですね。俊はもともと自分の気持ちを表現したり、言葉にしたりすることができない人だし、沙月は長女気質なうえ、割と何でも器用にできちゃう人なので不満があっても我慢してやってしまうタイプ。だから、それまで話し合いをせずにきてしまっていたけど、沙月の不満が爆発したことを機にお互いの気持ちを伝え合って…という。ここでも、話合いの中では何も解決していないけれど。2人の心が動いていくんですよね」

立場が変わって初めて気付く、お互いの苦労やありがたさ


──とげとげ。さんのご家庭では、家事育児の分担はどのようにしていますか?

とげとげ。さん「だいたい半々になるようにしています。例えば、朝食は私で夕食は夫、洗濯をするのは夫で、畳んでしまうのが私という感じです。最初にある程度決めましたが、やっているうちにこれは私のほうがいい、夫がやったほうがいいと変えたりもしました。夫は家事の負担が増えているうえ、さらに私に不満を言われるので、最近は夫から『俺もやってるのに』という不満が出てきて喧嘩になることもあります(笑)」

──俊と沙月は“しゅふ”と“大黒柱”の立場が入れ替わったからこそ、それまで気づくことのできなかったお互いの苦労やありがたさに気付いていきます。とげとげ。さんがそれに気付いたきっかけは?

とげとげ。さん「同業の友人と話していると、女性の場合は自己実現のために描いている人が多いのですが、大黒柱の男性だと自己実現以上に家族のために稼がなきゃというプレッシャーがかかっているのを、会話の節々で感じることがあるんです。男性と女性で仕事のスタンスが違うのかなと。

夫に聞いても、これから家族が暮らしていけるかということをまず一番に考えてからじゃないと、転職という判断はできないと言っていました。私だったら、そこまで深く考えずに転職できると思うんです。それは、夫の安定している収入があるからこそなんですよね。

一家の大黒柱を担う側にはそういうプレッシャーがある、ということを、沙月に語らせることができてよかったです。男性よりも女性が伝える方が、受け入れてもらいやすいと思うので」

住んでいるからこそ描けた、葉山の町のリアルな生活感や臨場感




──実際にとげとげ。さんが住んでいらっしゃる葉山の町を舞台にした理由は?

とげとげ。さん「この物語を描き始めたときは違う町を舞台にしようと思っていたのですが、町のリアルな生活感とか臨場感のある描写は、私自身も住んでいないと表現できないと思って葉山町を舞台にしました。俊が裏のおばあちゃんに頼まれて梅をとるシーンは、私の実体験から生まれたんですよ。道も本当にある場所を描いたりしています。

──風景がとても美しく、丁寧に描写されていて、読んでいると癒されます。

とげとげ。さん「ありがとうございます。私が感じる葉山町の魅力は、自然の音しかない場所にすぐ行けるところ。車の音とか人口の音がなくて、波の音や虫の声しか聞こえない場所が結構あるので、俊や沙月がそういった自然に癒されていく過程も描きたかったんです。私もストレスを感じたときは、よく海を見に行きます」



──最後に読者に向けてメッセージをお願いします!

とげとげ。さん「この物語が、忙しい日常の中の息抜きのような存在になれたらと思います。また読んだことをきっかけに、自分とか家族の心地よさについて考えるきっかけになれたら嬉しいです。ありがとうございました!」

【取材・文=松田 支信】

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