年々、長期化する梅雨&夏の酷暑。エアコンを使っておうち時間を心地よくしたいけれど、電気代が気になって…。
そんな涼しさと家計の間で揺れるあなたへ贈る「サーキュレーターの新お作法」。
快適も節電もかなえる技、伝授します!
教えてくれたのは▷宮本征一先生
摂南大学理工学部教授。
人が快適に暮らせる環境を実現するため、人が感じる暑さや寒さの側面から住環境を研究している。
自宅でもサーキュレーターを愛用し、エアコンの冷気を自在に操っている。
サーキュレーター、なんで必要なの?
サーキュレーターの仕事っていったい何!?
その役割を知り、賢い使い方をマスターすれば涼しさのコントロールは思うがまま。
節電にも大いに役立ちます。
■長引く夏は電気代の「節約」も意識。サーキュレーターを使うべし
エアコンあるのになんで?
■エアコンとは目的が全く違うから
「エアコンは空気の温度を下げるもの。
かたやサーキュレーターは空気を動かすもの。目的は異なりますが、2つは名パートナー。
併用すれば、足元にたまりがちなエアコンの冷気を循環させたり、好きな方向に誘導することも可能になります」(宮本先生。以下同)
扇風機との違いって?
■空気を遠くに飛ばすか、人に当てるかの違い
「サーキュレーターは空気の循環が目的なので、直進的な強い風を起こしますが、扇風機は風を人に当てて涼を得るのが目的。
そのため、広範囲に届くやわらかな風を起こします。
最近では、風量が微調節できるサーキュレーターも増加中」
節約になる使い方って?
■室温は高めで風を回すのがいい
「エアコンとサーキュレーターを併用すれば、ムラなく室内を冷やすことができるうえ、空気のよどみもなくなり清涼感がアップ。
室温が28~30度でも快適に過ごせるので、エアコンの消費電力が抑えられ、節電につながります」
面倒くさいからエアコンだけでもいいですか?
■エアコンのみも◎。でも節電&快適さアップなら併用を
「サーキュレーターは、ただ空気を動かすだけのものではありません。
置き場所や向きを工夫するだけで、エアコン使用時に感じる『足元が寒い』『冷気が当たる』といった不快感を軽減することができるんです。
たとえば、冷気がたまる場所にサーキュレーターを置いて別の方向に冷気を誘導したり、サーキュレーターの風をぶつけて冷気を散らしたり。
空気の流れを調節することで、一人一人に合った心地よい空間が作れるというわけです。
快適さは人それぞれ。
サーキュレーターで節電しながら、快適な空間を作ってくださいね」(宮本先生)
エアコンの冷気を自在に操るサーキュレーターの使い方は?
エアコンの冷気を自在に操るには、ちょっとしたコツがあるんです。
2つの技で、エアコン使用時の不快なあれこれを解消!
■冷たい空気は、風向きを工夫して「飛ばす」or「散らす」技がおすすめ
部屋に温度のムラができちゃうんです
■「飛ばす」で解決!冷たい空気回し術(基本のテク)
「冷たい空気は下に落ちる性質があるため、エアコンの冷気は足元にたまりがちです。
基本的に、冷房時にはエアコンの風向きを上向きにしておくのが◎。
その上で、冷気が落ちる場所にエアコンを背にするようにしてサーキュレーターを設置しましょう。
冷気が循環し、部屋全体がムラなく涼しくなりますよ」
エアコンの風を浴びるのが苦手です…
■「散らす」で解決!エアコンに風パンチ術
「エアコンの冷気を不快に感じたら、冷気に向けてサーキュレーターの風をぶつけてみてください。
冷気の塊にカウンターパンチを当てて、粉々に散らすようなイメージです。
冷気が空間全体に広がるので、早く部屋が冷えるメリットも。
ただし、吹き抜けがあるなど天井が高い家は逆に冷房効率が下がるので×」
寝るとき体が冷えるんです
■「飛ばす」&「散らす」で解決!壁ではね返り術
「体が冷えてしまうのは、室温が低すぎる可能性が。
まずエアコンの設定温度を高めにして、サーキュレーターは壁に向けて設置。
部屋の空気全体を動かしましょう。
壁に当たり、跳ね返った風が寝具にも向かうように調節すれば、寝具に籠もっている熱を散らす効果も」
キッチンにエアコンがなく暑いです
■「飛ばす」で解決!強風直送り術
「遠くまで強い風を送るのは、サーキュレーターの得意技。
まずキッチンに隣接する部屋のエアコンの風向きを、下向きに設定。
冷気が落ちる場所に、キッチンに向けてサーキュレーターを置いたら、冷たい空気を一気にキッチンまで送りましょう」
こんな時はどうする?夏のサーキュレーター活用術
■換気したいけど冷気が逃げそうで怖い
「換気をすると室内外の空気が入れ代わるため、一時的に室温は上がります。
ですが、外から入ってきた空気の熱を冷房で冷えた壁や天井が吸収するため、10分ほどで元の室温に。
換気の際は窓のそばに外に向けてサーキュレーターを置くと素早く換気ができますよ」
■暑がり夫との快適温度の違いがつらい…!
「快適に感じる温度は人によって異なるため、衣服で調節をするのがベスト。
設定温度は高めにして、暑がりの人は薄着に。
寒がりの人は衣類で首や手足の関節をカバーすると、冷えから体を守れます。
それでも暑い人は、サーキュレーターや小さな扇風機などを使って、個別に涼を得る工夫を」
■カーテンとすだれ結局どっちが省エネ?
「室温を上げる原因となる太陽の熱は、窓ガラスを透過するため、窓の外で遮断することが大切です。
ですから室内のカーテンよりもすだれが◎。
またゴーヤーなどで作る緑のカーテンは、葉から水分が蒸発する際に周囲の気温を下げるため、さらに省エネ効果が期待できます」
<レタスクラブ’21年6月号より>
イラスト/松元まり子・ここままこ 取材・文/恩田貴子