元捜査一課刑事が明かす手口 スマホで子どもが騙される 5話
何気なくSNSにアップした一枚の写真から、子どもがストーカー被害に…。SNSをはじめとするネットの世界には、大人でさえ気づきにくい危険が潜んでいます。
我が子が被害者にならないために、いま親ができる対策とは―?元捜査一課刑事・佐々木 成三著の『元捜査一課刑事が明かす手口 スマホで子どもが騙される』(青春出版社)をお送りします。今回は第5回です。
※本作品は佐々木 成三著の書籍『元捜査一課刑事が明かす手口 スマホで子どもが騙される』から一部抜粋・編集しました。
問題1 人物像当てクイズ
どんな人物を思い浮かべますか?
私が子どもたちに行っている「スクールポリス」の活動は、犯罪リスクの低減を目的としています。
その講演の中で、中学生や高校生に出している問題です。
こんなプロフィールを見てどんな人を思い浮かべますか?
この人の人生について、どう思いますか?
こう子どもたちに聞くと、
「すげえ金持ちの実業家か?」
「若いけど会社の社長なんだ」
など、自分のまわりでは知り合えない若手のビジネス成功者をイメージするかもしれません。
正解は、「振り込め詐欺グループのリーダー」です。
■SNSの特性――性別や年齢を隠せる
振り込め詐欺グループのリーダーは「詐欺をやっているよ」と言って近づいては来ません。当たり前ですよね。皆さんをだまそうとしているのですから。
振り込め詐欺をするような人は、誰が見ても「詐欺師です」とわかるような人は少なく、真面目なエリートビジネスパーソンのようなタイプも多くいます。
そういった人たちが、豪勢なマンションに住んでいることを匂わせながら、
「今度うちでパーティーをやるから君も来ない?」
と言われたら、どうしますか?
何かいい話があると思い、行ってみたいと思いませんか? 先のクイズで若くて成功した、かっこいい社長だと思った人は、付いて行ってしまう人が多いかもしれません。
実際パーティーに行ってみると、たくさんの人がいて、自分も同じようになりたいと強く感じ、投資詐欺や闇バイトを手伝うことになってしまった大学生を私は知っています。
すでにお話ししたように、もう身元が割れてしまっているため、抜けようと思っても抜けられなくなります。
そもそも「25歳で高級ベンツを現金で買う」「毎日パーティーをしている」という上っ面だけの情報を見て、その人物の本質を見抜くことはできません。
年齢に関係なくいろいろな人と知り合える。これがSNSの良さでもあり怖さでもあります。
とくに子どもの場合、SNSではいきなり趣味の話からスタートすることが多いですよね。
例えば、オンラインゲームや好きなバンドなど、共通の話題があれば、年齢・性別問わずつながってしまいます。子どもは簡単に人を信用してしまうのです。ゲームが強い、ゲーム上で人をまとめるのがうまい、お金を持っているといった間違った物差しで人を信用してしまいます。
中学生の女の子のグループに入るために、40代の男性が女性の名前でアカウントをつくってその輪に入っていた、などという話はザラにあるのです。
SNSは未来の友だちを探すという意味ではとてもいいと思います。
私も、SNSを通じて幅広い業界の人と知り合うことができていますし、仕事においても必要不可欠です。
ただ、子どもに知っておいてほしいのは、SNSでは別人格を作ることができるということ。
私は、ネットの中だけで人を見極めることは難しいと思っています。もちろん、大人でも、です。
ネットの中では本性を隠せます。それどころか、性別や年齢も隠せます。別人格で人と接触することができます。
ネットの中で知り合った〝素敵な〞人と、素直に「会ってみたい」と思うのが、子どもです。
だからこそ、子どもに早くスマホを持たせて、早くからネットリテラシーを学ぶ機会を増やすことが大切です。
私は小学生からスマホを持たせるべきだと思っています。コロナの影響でこれからますますオンライン化が進み、スマホを持っているかどうかで教育格差さえ生まれる時代です。子どもにスマホを持たせた上で、どう使うか。この教育は待ったなしの状況なのです。
社会人になったとき、ネットリテラシーを持っているかどうかは、いつからその教育が始まっているかによると思います。
情報漏洩の怖さや、スマホ(SNS)によってどのような犯罪に巻き込まれる可能性があるかを知っている。早い時期からそういった教育を始めておけばそれだけ、ネットリテラシーの高い社会人になるでしょう。
著=佐々木 成三/『元捜査一課刑事が明かす手口 スマホで子どもが騙される』(青春出版社)