サイト内
ウェブ

Vol.81 すべての人に復興のための出番があると僕は思っています。

  • 2011年9月15日

 みなさん、こんにちは。ゴスペラーズの北山陽一です。

 前回は、自分の貯金をとり崩してボランティア・センターではたらいている人たちのことを紹介しましたが、それほどハードでないにしても、何かの形で被災地支援に具体的に取り組んでいる方はみなさんの周りにもいらっしゃるでしょう。そういう人たちに対して、今回の震災の被災者をまだ具体的に支援していないと自分で思っている人は、引け目を感じてるかもしれないし、あるいは“そんなことやっても意味ないんじゃないか”という無力感に打ちひしがれている人もいるかもしれません。でも、この復興のための取り組みというのは残念ながら長く続くことなので、そういう人たちにもこれからやることがきっとできてくると僕は思っています。

 というのも、これは僕の実感でもあるんですが、普通の精神力と感受性を持っている人であれば、被災地に行くとどんどん心が削られるんですね。削られるという表現が適切かどうかはわからないけれど、でもやっぱり辛いんですよ。しかし、口が裂けても現地では辛いとは言えません。だって、明らかに自分より辛い人が目の前にいるから。で、帰ってきて、日常の生活に戻っていったときにじわじわ来るんです。それはどうしてかと考えたら、戻ってきてしまうと、実際に自分が役に立つという作用がなくなるわけですよね。現地にいれば、どんな惨憺たる状況だったとしても、目標はみつけられるだろうし、ちょっとした達成感みたいなものも得ることができるし。だから、現地に行けば行くほど、帰ってきたときに辛い、みたいなことが確かにあるんです。

 いちばんドライで楽なのは、1回と決めて行って、自分にできることをドーンとやって、“ああ、オレはいいことした!”って帰ってくることだと思います。でも、僕が信じているやり方というのは、しっかりと人間関係を作ったうえで、仲間になっていっしょにやっていこうぜというやり方ですから、そうすると、やっぱり仲間についても考えることになるじゃないですか。例えば、石巻で子どもたちにミサンガを着けてもらうと、どこにいても“連中はどうしてるかな”ってやっぱり毎日考えますよね。そういうふうに、いろんな形でじわじわ来るんだということを、まだ行ってない人には知っててほしくし、行くとなったら、覚悟して出かけてほしいとは思うんです。ただ、そういうことに対する耐性の度合いは人によっていろいろで、人によってはあまり行かないほうがいい人もいるかもしれない。ということは、支援する側に層の厚さが必要なんですよね。で、僕は正直に言って、復興には20年、30年かかることだと思っています。だから、この時点でそこに関わるのが4ヶ月、5ヶ月後れているような状況になっていたとしても、それは大した問題ではないというか、少なくとも引け目を感じるようなことではないということです。今の時点で、引け目を感じている暇があったら、1年後、2年後に何ができるかを考えるほうがよほどいいと思います。

 最後に、僕自身のことも書いておかないといけないですね。こういう時だからこそ、何かにおいて“こういうふうな未来になるといいな”というようなことを提示するドリームメーカーみたいな人が必要で、僕の役割はそこなのかなと考えているところです。というのは、現地でいろいろ見て行くと、少なくとも今の段階では僕にしかできないことが確実にあるんですよね。それを無視できるような鈍感力は、僕にはないんですよ(笑)。ということは、やるしかないんですよね。それが、仮に自己陶酔や偽善に見えたとしても、それはかまわない。この1ヶ月半というのは、そういう覚悟が自分のなかで固まってきた時間でしたね。ただ、よし、やるぞ!みたいになってないのが、自分でも気に食わないんですけど(笑)。だから、しっかりと地に足をつけて、着々とやっていくことになると思っています。

キーワードからさがす

gooIDで新規登録・ログイン

ログインして問題を解くと自然保護ポイントが
たまって環境に貢献できます。