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Vol.170 人と人との新しいつながりを生み出すのに本当に必要なこと

  • 2015年4月30日

 みなさん、こんにちは。ゴスペラーズの北山陽一です。

 前回の連載で、僕らの活動にもあたらしい芽吹きを感じることができたということを書きましたが、その“芽吹き”についてもう少し詳しく書くと、「被災地支援という課題を超えた所で、単純に音楽を通じた新しいつながり、コミュニケーションを生み出すということが進められているな」ということです。

 誤解しないでほしいのですが、“被災地支援はもういいんじゃないか”なんてことは、まったく考えていません。個人的には、むしろ言葉本来の意味でのライフ・ワークというか、一生取り組んでいくものだと思っていますし、実際のところ本当の意味での復興には少なくともそれくらいの時間が必要なんじゃないかとも思っています。ただ、それは、僕がAWSの学生に投げかけているテーマ、あるいは彼らといっしょに活動していくなかで出会う人たちに感じ取ってもらいたいこととは、違う話です。

絆 それは、具体的に言えば、「震災の被災地のように、どうしても人と人が結びつかないとやっていけないような状況がないと、僕らはつながれないんでしょうか?」ということであって、もちろん僕は“そんなはずはない”と思っているわけです。被災地支援の取り組みが大きなきっかけになったことは間違いないと思いますが、おかげでそのことに気づいた人は多いと思うんです。僕は、“音楽が好きで音楽をやっている人”というところにたまたチャンネルを持っているから音楽を使って活動しているんですけど、それはサッカーでもラグビーでも野球でもいいし、ダンスでも、一緒に楽しめるものならなんでもいいわけですよね。そして、有名人でなくても、チャンネルを生かす方法はあると思うんです。もちろん、野球のイチロー選手やサッカーの香川選手だったらすぐチャンネルがつながって段取りも早いということはあるでしょうが、例えばその後は○○大学の△△サークルかなんかが引き継げばいいわけじゃないですか。そのための設計が最初になされていれば、継続性が飛躍的に上がるはずです。まさに僕はそういうことを女川と気仙沼でやろうとしているわけであって、もしそういうことをみんながどんどんやるようになれば、例えば企業のCSRの考え方もだいぶ変わってくると思います。

 僕自身は、女川や気仙沼の人たちに、“こんなふうに受け入れてほしいな”とか“こうなったらいいな”というようなことはほとんど考えてないんですね。意識しているのは、嫌がられたことは繰り返さないこと、ニーズがあるならそれに応えようとすること、できるだけ仲良くなってなんでも言ってもらえるような関係になっていきたいっていうことくらいです。そういう関係性を構築するなかで、AWSの人たちにも人との社会人的な接し方というものを学んでもらえるといいかなっていう。とくにそこのところは、これまでの人生経験から言っても、僕はあまり教えられないことなので(笑)。むしろ、僕自身も勉強させてもらっている感じです。そして、AWSの人たちに感じてほしいのは、いまは「気仙沼だから」「女川だから」ということでやっていますが、その前提条件を取っ払って、どこに行ってやってもできることだなということであって、そう思える日が来るはずなんです。もうすでに、そういうことを感じている人もいるかもしれませんが、そういうふうに感じられるようになれば、この活動の向うに見えてくるものやこの活動を通して感じる喜びもさらに広がっていくと思います。

 もっとも、現実的な話をすれば、こういう活動にも最低限度の資金は必要です。いちばん手っ取り早く調達する方法は toto BIG を当てることなんですけど(笑)、僕もそこのところはいろいろと真剣に考えないといけません。働いてもらったお金を何に使うか、ということに意義を得たという意味でとても幸せなことなので、喜んで頑張ろうと思っていますが。それに、できるだけお金をかけないでやる方法もいろいろ考えられるわけで、結局は“本当にやりたい”と思うかどうかなんですよね。震災があったからきっかけがつかめたんですけど、でも絆を作ろう、ネットワークをつなげようということは、そういう激しいきっかけがなくても、やっていいんだよっていう。そのことを僕は、言い続けていきたいと思っています。

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