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Vol.100 世の中が変わっていくなかで、何を基準にしてエコを考えればいいのか?

  • 2012年6月28日

  みなさん、こんにちは。ゴスペラーズの北山陽一です。

 いつの間にか(というのが、本当に実感なのですが)、この連載も100回を迎えることになりました。いつも読んでくださっているみなさん、本当にありがとうございます。でも、100回が「いつの間にか」であるように、特に気負うこともなく、それこそぼんやりと、これからも続けていきたいと思います。この第100回連載も、例えば歌番組の記念放送が通常の1時間枠から3時間枠に拡大するのとはまったく違って、いつも通りの分量といつも通りのテンションでお送りしたいと思います。

世の中が変わっていくなかで、何を基準にしてエコを考えればいいのか?
 さて、前回はペットボトルの分別回収およびリサイクルを取り巻く状況がこの数年の間にすっかり様変わりしていると書きましたが、同じようについ最近まで“エコと言えば、これ抜きには語れない。これこそエコの中心課題”と言われていたようなことが、そんな話題さえなかったかのような状況になっている例は少なくありません。先日、「温室効果ガスを2020年には90年比で25%削減する」というかつての“国際公約”の実現は絶望的、という環境省の試算が発表されましたが、その“国際公約”を憶えてますか。当時は大いに話題になりましたが、多くの人はもう忘れてしまっていただろうし、それに憶えている人の間でも温室効果ガス、特にCO2は当時言われていたほどに悪者でもないんじゃないのかという認識が広がっているように思います。実際、「CO2が悪者」説は覆る可能性があって、すでにそういうことを主張している人もいますよね。それに、とにかくCO2は悪者であるとして、CO2の排出量をどうしても減らそうとするなら、ごく単純に考えて化石燃料の取引量を制限すれば確実に実現できるはずですが、そういうことは決して実行されません。それは、世界中のほとんどの人が“いま享受している生活の質を落としたくない”というふうに思っているからですよね。

 それはともかく、前回もちょっと触れましたが、エコの取り組みについては社会の状況や科学技術の発達によって“常識”が180度転換したりすることもあるわけです。そういうなかでは、個人的な倫理観や美意識みたいなものが混乱してしまうようなことがあるように思います。極端な仮定の話をしてみましょう。例えば食品のリサイクル・システムが進んだ世の中にあっては、飲食店であるメニューを100コ注文した場合に、それを全部食べれば注文した人たちの生命維持に使われるのに対して、99コ残してもそれはエネルギー化して社会システムの維持に使われて、いわば99コを社会に寄付したみたいなことになる、と。だから、むしろ残したほうが社会的貢献度は高い、というようなことになったりするのかもしれません。さて、そういう世の中では食べ物についてのエコ的な取り組みというのはどういうふうになるんでしょう? また、食べ物に対する倫理観とはどんなものになるでしょうか?

 エコの取り組みを進めるモチベーションや判断の基準として、個人の倫理観や美意識、さらには品性をベースにする考え方があります。僕自身、そういうところからエコを考えている部分もけっこうあるんですが、でもそういうことをベースにすると社会的な広がりを持たせにくくなるという側面もあります。悩ましいですよね(笑)。とりあえず、本質的な倫理や品性に関して僕が思うのは、日本人はそういうことについてどうもゼロサム的になりがちだなあということです。もう少し許容の幅を持ってもいいんじゃないかなあ。だって、完璧な人間なんていないんですから(笑)。

 日本人は「人様に迷惑をかけてはいけません」と子どもの頃からきつく躾けられますが、インド人は「生きるということは必ず周りに迷惑をかける。だからお前も寛容になれ」と教わるそうです。どうですか? この2つの教育が目指す場所は同じなんだと思います。日本方式は、社会が寛容であることを前提にしているのだと思いますがただ、今の日本人社会がこの前提を受け止めるだけの寛容さを持っているとは僕には思えない。また「迷惑かけてるわけじゃないんだからいいじゃないか!」という考え方に触れることも少なくありません。だから僕はこのインド的な考え方が広がると日本の社会はかなり変わっていくんじゃないかなと思っています。日本はもともと多様性に寛容だったのだから当たり前といえば当たり前ですが、このインド式の思考のほうがより多様性を認めることを促していると思うんです。いろいろなレベルの環境における多様性を認めること、それは変わらないエコのテーマのひとつですよね。


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