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Vol.61 WOOD JOB! 林業と映画

  • 2014年6月19日

 現在公開中の「林業」を舞台にした映画「WOOD JOB!(ウッジョブ)〜神去なあなあ日常〜」を見に行きました。僕も間伐体験をしたことはあるものの、林業の実際の現場はまだまだ知らないことだらけ。ドキュメンタリーとは違ったエンターテインメント作品ではありますが、笑ったり泣いたりしながらいつの間にか林業のことも学べる、とても良い機会でした。

 舞台は三重県の山間部。そのお隣の奈良県を舞台にした、河瀬直美監督の「萌の朱雀」(1997年度カンヌ国際映画祭・新人監督賞)という映画の風景もそうだったのですが、紀伊半島の内陸部は急傾斜地が多く、日本の地形の象徴のように感じます。昨年夏の「きこえる・シンポジウム」でも話題にのぼりましたが、日本の多くの山と同じように木を運ぶ林道をひとつ作るのにも大変な場所。けれども森林資源が非常に豊富なこの地域で、日本ならではの林業が受け継がれてきました。

WOOD JOB! 〜神去なあなあ日常〜

 映画のなかのセリフにも出て来ますが、林業とはひいおじいさん、おじいさんの代が植えた苗木から育った木を伐って、ひ孫や孫の代のために苗木を植えるという、50年〜60年、場合によっては100年という途方もない時間のサイクルのなかで成り立つ仕事。その期間のなかで、地ごしらえ、植栽、下草刈り、枝打ち、間伐、主伐といった工程が行われていきます。

 林業というと、やはり間伐や主伐といった豪快に木を切り倒す作業が印象的です。しかし夏の雑草が生える時期によく行う、うだるような暑さのなかの地道な「下草刈り」、秋〜冬の木の成長が止まっているときに高いところまで登って、森に光を通すために行う「枝打ち」にも、相当の時間をかけます。この映画の主人公と同じような研修生のなかには、危険な作業よりも逆にこういった地道な作業の連続に音を上げて、やめていってしまう人も多くいるのだそうです。

 また、日暮れまで森の奥深くで作業を続けているので、同じ家族でありながら実際の仕事の様子を見たことがない、という人も多いそうです。木に登るための色々なロープワークから、チェーンソー、木を運び出す重機にいたるまで、道具を上手に使いこなしながら今日もどこかで日本の山を育てている、林業の方たち。その山から木材が生まれ、僕らの暮らす家、椅子やテーブル、そしてなにげない「日常」が生まれます。

 この映画を描いた矢口史靖監督の作品のなかでは、1994年に鈴木卓爾監督と共同で制作した「ワンピース」という自主制作映画を見たことがあります。カメラを固定してワンカットのみで撮影した短編のオムニバスで、実験映画ともいえるのかもしれませんが、当時かなりの刺激を受けました。そして今回もそのときのような実験精神というか、リアリティをあえて逸脱した愛すべき「くだらなさ」がふんだんに取り込まれていて、かなり面白かったです。代表作の「ウォーターボーイズ」や「スウィングガールズ」をまだきちんと見たことがないので、今から急いで見なくちゃ、と思いました。

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