オオカミが自らイヌへ進化!? シミュレーションで示された新説

  • 2025年3月6日
  • Gizmodo Japan

オオカミが自らイヌへ進化!? シミュレーションで示された新説
Image: Mas3cf via Wikimedia Commons CC BY-SA 4.0

オオカミは自発的にイヌへと進化したのかも。

「オオカミが人間の残飯を求め、自ら家畜化した」という昔から囁かれていた仮説が、新たなシミュレーションにより、さらに有力になりました。

家畜化のプロセスは長らく議論されてきた

獰猛なオオカミが、ラブラドールやプードルなど可愛らしいイヌへと進化したというのは、にわかに信じがたいかもしれませんが、これは実際に起こった進化です。

オオカミの祖先がイヌへと家畜化された過程は、「約30,000年前から15,000年前」と「15,000年前から現代まで」の2つの時期に分けることができます。15,000年前から現代までの間では、人間がオオカミを選択的に繁殖させてきたと考えられていますが、前者の期間については、家畜化のプロセスが長らく議論されてきました。

そんな中、アメリカの研究者たちにより行われたのが「オオカミが人間の集落から食料を得るために自ら家畜化した」という仮説を支持する新たなシミュレーション。

この仮説への反論として、「人間の関与なしに自然選択がこれほど短期間で進むはずがない」という時間的制約に言及するものがありましたが、研究者たちは、数学モデルを駆使して、この進化は可能であることを示したのです。

この研究結果は、2025年2月12日付けで学術誌『英国王立協会紀要B(Proceedings of the Royal Society B)』に掲載されています。

オオカミが「自ら家畜化した」とは?

「オオカミが自ら家畜化した」という説は、よりおとなしい性格のオオカミが、食料を求めて自発的に人間の集落に近づき残飯を得られるようになったという考えに基づいたものです。

研究者らは論文で以下のように指摘しています。

残飯を求めるというアプローチは、不安定な野生下に比べ、比較的安定した食料供給を提供しました。その結果、これらのオオカミはアドレナリンの分泌が減り、攻撃性や警戒心が低下し、人間の近くで生活することへの耐性や嗜好が増したと考えられます。そして、このような個体が人間の住環境に定着し、その集団から初期の原始的な犬が誕生したのです。

今回の研究で、インディアナ州ヴァルパライソ大学の研究者らは「自ら家畜化した」という仮説に対する「時間的制約」の反論を検証するために、コンピューターモデルを使用、検証では、オオカミの「人間に対する耐性」という特性の進化シミュレーションが行われました。

シミュレーションの結果浮かび上がったのは、「自ら家畜化する」という仮説は、時間的制約を理由に否定することはできないという結論でした。

つまり、オオカミは、能動的な人間の関与がなくとも、15,000年の間にイヌへと進化することができたというのです。一方、そのためにはオオカミが自発的に人間の集落近くで生活し、おとなしい個体同士が繁殖する必要があったとのこと。

まだ解決されていない疑問

研究者たちは、このモデルが時間的制約という問題はクリアできる可能性を示したものの、それが実際に事実であったと証明したわけではないと強調します。これはあくまでシミュレーションであり、現実ではないのです。

また、「オオカミが十分な残飯を先史時代の人間から得ることができたのか」や、「野生動物が近くにいることを人間が許容したのか」といった疑問が解決したわけではありません。

一方、イヌへの進化についてもう一つの有力な説として「人間がオオカミの子を拾って育て、社会化させた」という仮説も存在します。人間に適応できなかった個体は淘汰され、順応した個体が大切に育てられてきたという考え方です。

いずれの説が正しいにせよ、オオカミがイヌになる過程は想像以上に複雑で、長い時間をかけて進んだものなのかもしれません。

書籍(Kindle版もあります)
『ギズモード・ジャパンのテック教室』 1,760円 Amazonで見るPR

キーワードからさがす

gooIDで新規登録・ログイン

ログインして問題を解くと自然保護ポイントが
たまって環境に貢献できます。

掲載情報の著作権は提供元企業等に帰属します。
copyright 2025 (C) mediagene, Inc. All Rights Reserved.