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DXとミドリムシを活用する「エコポーク」が一般販売スタート!独自の事業と至福の味に、食と豚の未来が見えた

  • 2023年4月21日
  • GetNavi web

このままでは、そう遠くない未来に豚肉が食べられなくなってしまう――。IT技術を駆使した養豚DXのスタートアップ「Eco-Pork(エコポーク)」の新規事業発表会は、ちょっと衝撃的な主旨の話から始まりました。”食肉文化を次世代につなぐ”を企業理念に掲げる、同社の“次の一手”をイベントレポートと豚しゃぶ食レポで解説します。

↑エコポークが販売する豚肉の味わいもレポートします

 

養豚経営支援システムで生産者の利益増に貢献

まずはエコポークという会社の取り組みから紹介。「株式会社Eco-Pork」は、外資系コンサルティング企業でAIによる統計解析のスペシャリストとして活躍した神林 隆さんが2019年に起業しました。

↑株式会社Eco-Porkの代表取締役、神林 隆さん

 

代表的なサービスは、テクノロジーで養豚を改善するクラウド型養豚経営支援システム「Porker(ポーカー)」。こちらは、AIとともにセンサーや3Dカメラなどを駆使して豚の体格や健康状態を一頭ごとに管理し、少ない人手でも効率的に豚を生み育て、適正サイズでの出荷を可能にするシステム。日本全国約1割の養豚農家で導入されています。

↑実際の養豚農家「鬼や福ふく」(後述)にて。柵がなく自由に動き回れるフリーストールで、豚をストレスなくのびのびと、エシカル(倫理的)に育てている希少な生産者です

 

豚は出荷時の体重が96〜121kgの「上物」でないと買取価格が下がってしまうのですが、そんな重たい豚を体重計にのせるのは至難の業。そうしたことから、「上物」取引の割合は平成〜令和の約30年間の市場で一度も50%を超えたことがないとか。「Porker」はこうした現状の改善に役立てられ、養豚農家の利益増に貢献しています。

↑2000年に1万1700軒あった国内養豚農家数は、2022年時点で3590軒に。70%減となっており、その背景にあるのが養豚ビジネスの収益性です

 

日本の養豚業では、飼料高騰や人手・後継者不足を原因とした持続可能性が課題となっています。一方で、世界的な人口増加などから食糧危機が叫ばれていることも見逃せません。こうした要因の一つひとつが冒頭の「このままでは、そう遠くない未来に豚肉が食べられなくなってしまう」につながり、この解決のために立ち上がったのがエコポークなのです。

 

世界初のユーグレナエコポークや一流シェフの監修で攻める

これまで、エコポークの取引先は養豚農家などの事業者でしたが、新たに打ち出したのが一般消費者向けの豚肉販売サービス。専用ECサイトから養豚生産者の豚肉を、精肉や加工品、ミールキットといった形での提供をスタートしました。この新事業が発表会のメインテーマです。


↑こちらが専用ECサイトの一部。調理前の精肉なども、多彩な部位と加工法で販売されており、なかにはお得な定期便コースも

 

まずは第1弾として、新潟県魚沼の生産者「鬼や福ふく」が雪深い山中で育てた銘柄豚「鬼の宝ポーク」を発売。加えて、この豚肉を本場ドイツ出身のマイスターブランド「バルドゥーン」が仕上げたシャルキュトリ(豚肉を用いた加工品)もラインナップ。

↑完全無添加の伝統製法にこだわるドイツ人マイスター、トビアス・バルドゥーンさん

 

さらに驚くべきニュースは、藻の一種であるミドリムシを使ったスーパーフード「ユーグレナ」を循環型飼料として活用した「ユーグレナエコポーク」を世界で初めて生産したこと。こちらも専用ECサイトにラインナップされています。

↑「ユーグレナ」の粉末。「ユーグレナ」は全59種の様々な栄養素を含み、持続可能性にも配慮した食品として知られています。エコポークでは製造ラインの切り替え時に出る、従来は廃棄に回っていた「ユーグレナ」を使うことでロス削減にも寄与しています

 

加えて発表されたのが、星付きシェフ・田村浩二さんがフードディレクターに就任したこと。今後ECサイトで販売される豚肉や加工品、ミールキットの開発に携わっていくそうです。

↑田村浩二シェフ。31歳で、当時開業から世界最速でミシュランガイドの星を獲得した⽩⾦台「TIRPSE(ティルプス)」のシェフに就任し、その後「ゴーエミヨジャポン2018 期待の若⼿シェフ賞」を受賞(写真はその授賞時に撮影)

 

田村シェフは、食文化の持続性にいち早くコミットしていた料理人。代表的な取り組みが、サスティナブルシーフードブランド「アタラシイヒモノ」の監修です。

 

またトレンドメーカーとしての側面もあり、あの「Mr. CHEESECAKE」のプロデュースにより世の中にD2C(Direct to Consumer/メーカーが消費者と直接取り引きする)チーズケーキブームを巻き起こした仕掛け人でもあります。

 

そんな田村シェフに、エコポークの開発で期待していることについて聞きました。

 

「漁業に関しては、そもそも魚を食べる日本人が減っているという課題解決に対するやりがいがあるのですが、豚肉は食べ手が減っているわけではないんですね。その点も踏まえ、多くの方に届けられるという新たな可能性を非常に感じています」(田村シェフ)

 

豚肉に関する興味深いエピソードも教えてくれました。

 

「フランスでの修業時代、厨房仲間と仕事が円滑に回るようになったきっかけが、僕が作った賄いだったんですね。『レシピ教えてよ』とか『こんなにおいしい賄いを作れるんだったら、次の仕事も任せるよ』とか。その賄いメニューが、とんかつだったんです。

 

帰国後の『ティルプス』時代も『つかんと』というイベントをやらせていただくぐらい、とんかつは好きで得意な料理ですし、あとは生姜焼きも好きなので、より研究を重ねておいしく提案したいと思っています」(田村シェフ)

↑意気込みを語ってくれた田村シェフ。なお、「ティルプス」は、フランス語で精神や粋を表す「ESPRIT」を逆にした造語で、「つかんと」はとんかつの逆。現在はイベントから発展し、虎ノ門ヒルズで「つかんと」が営業中

 

噛むごとに芳醇な肉汁が湧き出てくる!

イベントの終盤では、田村シェフが特別に考案した料理がふるまわれました。用意されたのは豚のしゃぶしゃぶ。シェフは「豚肉のおいしさを、ストレートかつシンプルに味わっていただくために、豚しゃぶを用意しました」とのこと。

↑こちらが田村シェフ考案の「香味出汁豚しゃぶ」。豚肉は「鬼の宝ポーク」のロースとバラ肉です。出汁や薬味も各地の一級品が提供されました

 

味わってみると、出汁からして個性的かつ絶品。香川・渡海家の伊吹いりこ、北海道・礼文島山本商店の利尻昆布、秋田・仙葉善治商店のしょっつる(魚醤)などが調和したふくよかな香りと円熟したうまみの奥に、花椒(ホアジャオ)の爽やかな香りやシビれがシャープなキレを演出します。そして豚肉も、この力強さに負けないしっかりとした甘みとうまみ。

↑こちらはロース。見るからにしっとり、シルキーな肉質

 

モグモグと、咀嚼(そしゃく)を繰り返すなかでエコポークの真価がわかりました。しっかり火が通っていても驚くべき肉質の柔らかさで、ロースはうまみが口内にふわっと広がっていきます。そしてバラ肉は、より脂の甘みが豊か。噛むごとに、素材の奥から芳醇な肉汁がどんどん湧き出てくる感動的なおいしさです。

↑島根県江津市「しまね有機ファーム」の有機ゆず胡椒で。上品で爽やかな辛みと相まって、実に至福のおいしさ

 

ちなみに、エコポークでは豚⾁のおいしさを可視化するべく、豚⾁の成分検査を実施し、味わいをレーダーチャートで表⽰。「鬼の宝ポーク」は、特にうまみが優れていることがわかったそうです。また、田村シェフは「豚の腸内環境がいいんでしょうね。臭みがまったくなくて、だからこそうまみを豊かに感じられるのだと思います」とおっしゃっていました。

↑「鬼の宝ポーク」のレーダーチャート結果

 

豚にも地球にもやさしく、とにかくおいしいエコポーク。同社では2024年を目処に、「鬼や福ふく」のほかにも参加養豚農家数を3〜5件に拡大し、定期便のユーザー数は1000名超を目標に展開するそうです。畜産業界を取り巻く環境には様々な課題がありますが、今回のイベントに参加して食と豚の明るい未来も見えました。今後もエコポークの活躍から目が離せませんね。

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