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石川県山代温泉の温泉旅館〈界 加賀〉に日本初、旅館内の金継ぎ工房がオープン

  • 2023年5月24日
  • コロカル
器を使い続けるために半数のスタッフが身につけた金継ぎの技術

石川県山代温泉にある温泉旅館〈界 加賀(かい かが)〉に料理を盛り立てる器が破損してしまっても、新たな魅力を加えて使い続けるための金継ぎ工房がオープンしました。宿泊する人は、作業の見学や、修復工程の一部を体験可能です。

界 加賀

界 加賀がある石川県山代温泉は、石川県の伝統工芸である九谷焼や山中塗が盛んな地域のすぐそばにあります。2015年の開業以来、夕朝食の器はもちろんのこと、客室の茶器にも、地元の伝統工芸、九谷焼をはじめとした貴重で芸術的にも価値の高い器を使用してきました。

山代温泉は美食家で芸術家として名高い北大路魯山人が愛した場所で界 加賀の前身である白銀屋にも滞在しました。

界 加賀では、器と料理のマリアージュにこだわり、器を宝物として大切に扱っています。

その北大路魯山人の「器は料理の着物」という言葉に従って、界 加賀では、器と料理のマリアージュにこだわり、器を宝物として大切に扱っています。

器はどんなに大切に扱っていても、破損したり、劣化したりといったことを完全に避けることは難しいものです。

大切な器が欠けてしまったからといって、廃棄するのはもったいないと感じたのは蒔絵の経験を持つスタッフでした。

元蒔絵師のスタッフが他のスタッフに金継ぎの技術を広めた

蒔絵で使う漆は、強い接着力を持ちます。金継ぎは、陶磁器の破損部分を漆によって接着させ、継ぎ目を金などの金属粉で装飾して仕上げる日本の伝統的な修復技法のこと。蒔絵で使う材料や技術が共通しています。

元蒔絵師のスタッフが他のスタッフに金継ぎの技術を広め、界 加賀では、スタッフの手によって大切な器を守っていくことになりました。

金継ぎに使われる道具はさまざま。

金継ぎに使われる道具はさまざま。

今では金継ぎができるスタッフは全体の半数を超え、修復を行った器の数は300点以上に。界 加賀では、今後もスタッフが器を宝物としてとらえ、より本格的に取り組んでいくため、金継ぎ工房を誕生させることになりました。

日本初の温泉旅館内部にある金継ぎ工房

金継ぎ工房。

金継ぎ工房。

温泉旅館の内部施設に金継ぎ専用の場所が誕生するのは日本初のこと。

しかも界 加賀の金継ぎ工房で行うのは、天然漆をはじめとした自然の素材のみを使って器を継ぐ伝統的で難易度の高い金継ぎです。

漆で接着する本格金継ぎは、ひとつの器を継ぐのに少なくとも1か月以上かかります。合成樹脂で器を接着し、短期間で器を修復する方法もありますが、作家につくってもらった器を永く、そして安心して使えるようにと天然漆を使った伝統的な金継ぎにこだわっています。

金継ぎ工房で器を継ぐのは、温泉旅館のスタッフとして接客サービスを行う界 加賀のスタッフたち。

金継ぎ作家である中岡庸子さんに指導を受けるスタッフのみなさん

金継ぎ作家である中岡庸子さんに指導を受けるスタッフのみなさん。

天然漆を使用した金継ぎは難易度が高いものの地元の金継ぎ作家である中岡庸子さんを講師に招いて、日々学び続けながら活動しているのだとか。

金継ぎ工房では、宿泊者も金継ぎ作業の一部を体験できる「金継ぎいろは」というプログラムも用意しています。

金継ぎいろはでは、まず金継ぎの歴史や道具、界 加賀とのつながりを説明されます。その後、本格的な金継ぎの一部を体験できます。

金継ぎ工房内には、金継ぎに使われる天然漆や金粉、筆、へらといった材料や道具が展示されています。

金継ぎ工房内には、金継ぎに使われる天然漆や金粉、筆、へらといった材料や道具が展示されています。

天然漆を使った本格的な金継ぎ作業は全部で1か月以上かかります。そのため宿泊者が体験できるのは一部です。金継ぎいろはのプログラムでは、金継ぎを3つの工程に分け、そのうちどれかを体験できます。

金継ぎを3つの工程に分け、そのうちどれかを体験できます。

その3行程とは、欠けた器を漆のパテで埋める「埋め」、継いだ部分に金粉を蒔く「粉蒔き」、蒔いた金粉を漆で固める「固め」の工程です。

工程のうち、どの体験が可能かは、その日の作業状況によって異なります。金継ぎの一部を体験することで、金継ぎ技術の難しさ、奥深さも感じることができます。

「金継ぎ工房」は文政年間(1818〜30年)に建築されたと伝わる登録有形文化財にあります。

「金継ぎ工房」は文政年間(1818〜30年)に建築されたと伝わる登録有形文化財にあります。

表通りからの景観との一体感にこだわって準備が進められました。内装は施設外観と同じ紅殻(べんがら)色を使用し、棚にはこれまで界 加賀で金継ぎをした九谷焼や金継ぎに使用する道具などを展示しています。

窓からはスタッフが器を修復している様子を見学することも可能です。

夕食で提供される器の中には、金継ぎで修復した器も使われています。

そして、夕食で提供される器のなかには、金継ぎで修復した器も使われています。

地元の伝統工芸を使った器を大切に使い続けるために誕生し、その魅力と技術の一端を宿泊者も体験できる界 加賀の金継ぎ工房。伝統の技術に触れるきっかけとして訪れてみてはいかがでしょうか?

information

界 加賀 金継ぎ工房

住所:石川県加賀市山代温泉18-47

TEL:050-3134-8092(界予約センター)

見学時間:15:00〜17:30

金継ぎいろは体験

体験時間:15:30〜(30分間)

対象:12歳以上の宿泊者 定員6名

料金:無料 当日フロントで予約

web:金継ぎ工房 webサイト

writer profile

Saori Nozaki

野崎さおり

のざき・さおり●富山県生まれ、転勤族育ち。非正規雇用の会社員などを経てライターになり、人見知りを克服。とにかくよく食べる。趣味の現代アート鑑賞のため各地を旅するうちに、郷土料理好きに。

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