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県民割も。〈KAAT 神奈川芸術劇場〉 は劇場をまちに“ひらいて”いく。県民劇『虹む街の果て』2023年5月上演

  • 2023年4月27日
  • コロカル
より多くの人に劇場の魅力を感じてほしい

観劇という経験は、非日常的で特別なもの。同時に劇場を日々の暮らしから遠く感じて、滅多に足を踏み入れる機会がないという人も少なくないはずです。

〈KAAT 神奈川芸術劇場〉 、通称KAAT (カート)

〈KAAT 神奈川芸術劇場〉 、通称KAAT (カート)は、横浜中華街や山下公園から近いアクセスのよい場所にあります。神奈川県による舞台芸術をメインとした施設として2011年1月にオープン。開館以来、創造型劇場として演劇やミュージカル、ダンス公演など上質な舞台芸術を提供してきました。

そのKAATで、一般の神奈川県民を中心とした人たちが演者として参加する県民劇『虹む街の果て』が上演されます。

2021年初演『虹む街』より 撮影:田中亜紀

2021年初演『虹む街』より 。 撮影:田中亜紀

この作品は、2021年に庭劇団ペニノのタニノクロウさんが作・演出した『虹む街』のリクリエーションです。

飲食店の多い横浜市野毛地区を舞台として、一般の神奈川県民と一緒に舞台を創ることを目指した演目で、『虹む街の果て』では2021年上演の『虹む街』から10年、20年、さらに100年が経ったまちが舞台です。

KAATでは2021年に演出家の長塚圭史さんが芸術監督に就任したあと、劇場に季節感、リズム感を生み出そうと4月から8月までをプレシーズンと位置づけ、開館以来夏に続けているKAATキッズ・プログラムに加えて、ますます劇場をまちに“ひらいて”いくために、さまざまな仕かけを考えてきました。

2021年のプレシーズンに行う演目のため、長塚さんとタニノさんは、それぞれにまちで取材を行いました。そこで判明したのは、横浜の近隣に住む人たちさえ、思っていた以上にKAATの存在を知らないということ。

歴史はまだ浅いものの、演劇界や愛好家の間でKAATの存在感が確実に上がっていただけに、「関係者はずいぶんショックを受けた」と話すのは副館長を務める堀内真人さん。

KAAT神奈川芸術劇場の副館長で事業部長でもある堀内真人さん。

KAAT神奈川芸術劇場の副館長で事業部長でもある堀内真人さん。

「今まで劇場に足を運んだことのない方、興味を持ったことがない方に、どうやったら劇場の魅力、 演劇やダンスの魅力を知ってもらえるか、とにかく考えようということになりました」

劇場に街の人を招き入れたペイントイベントも実施

タニノさんは作品を制作にあたり、演目の舞台となる横浜の生活者の声を改めて聞きたいと考えました。

しかし当時はコロナ禍の真っ只中。それならば、と地域の飲食店経営者、お寺の住職、葬儀屋、教職者らとはオンライン飲み会を実施。人がまばらとなった飲食店も訪ねて、人々の暮らしを感じ取って演目に反映しました。

そしてできあがったのが『虹む街』です。

2021年初演『虹む街』より 撮影:田中亜紀

2021年初演『虹む街』より。 撮影:田中亜紀

舞台上にはコインランドリーや自動販売機などのセットで野毛地区独特の雰囲気を再現。コロナ禍を逆手に取った寡黙劇として上演されました。当初予定していた大々的なオーディションは断念したものの、実力派俳優たちと神奈川県民を中心に国籍もバラバラな人たちがまちの住人を演じました。

そして2023年度のプレシーズンとなるこの5月にリクリエーション作品『虹む街の果て』が上演されます。パーカッショニストの渡辺庸介と俳優の赤星満とともに神奈川県民を中心に公募で選ばれたまちの人たちが演じることになっています。

ペインティングイベントでは、参加者のみなさんとスタッフがわきあいあいとセットを緑にペイント。

ペインティングイベントでは、参加者のみなさんとスタッフがわきあいあいとセットを緑にペイント。

舞台に立つ以外にも一般の人が舞台に関わるイベントとして、舞台セットを作る「ペインティング参加イベント」も4月に開催されました。『虹む街』の舞台セットが、10年、20年、さらに100年と時間を経た『虹む街の果て』のセットとなるよう、苔むしたかのような緑色のペイントを一般の人が訪れて行うというものです。舞台上にあるまちのなかにさまざまな人が出入りした痕跡を残したいというタニノさんの想いから実現しました。親子連れや幼稚園から子どもたちも訪れ、セットが緑に染まっていきました。

「劇場をひらくと言っても、表現をより確かなものにするためには、隠す部分も必要です。それが演劇のマジック、魅力につながるからです。そんな裏側をペインティングイベントという形で開放して、作品づくりを自分ごとにして楽しんでもらおうという試みです」と話す副館長、堀内さんの言葉には手応えが感じられました。

天井が広いKAATのアトリウム。さまざまなイベントが行われます。

天井が広いKAATのアトリウム。さまざまなイベントが行われます。

KAATでは、『虹む街の果て』を含む主催公演で神奈川県民割を実施。広々としたアトリウムでのアート展示、演劇やダンスといったイベントでも、多くの人に劇場を体験してもらいたいという試みを行なっています。劇場という非日常への日常からの入り口としてKAATの取り組みは続いていきそうです。

information

KAAT神奈川芸術劇場プロデュース 『虹む街の果て』

作・演出:タニノクロウ

出演:渡辺庸介(パーカッショニスト) 赤星満 +神奈川県民を中心とした街の人たち

会場:神奈川県横浜市中区山下町281 KAAT神奈川芸術劇場<中スタジオ>

スケジュール:2023年5月13日(土)17:00、 5月14日(日)13:00 17:00、 5月20日(土)13:00 17:00、 5月21日(日) 13:00

チケット:一般:4000円/神奈川県民割引:3600円/24歳以下:2000円/高校生以下:1000円/満65歳以上:3500円

web:『虹む街の果て』 公演サイト

*価格はすべて税込です。

writer profile

Saori Nozaki

野崎さおり

のざき・さおり●富山県生まれ、転勤族育ち。非正規雇用の会社員などを経てライターになり、人見知りを克服。とにかくよく食べる。趣味の現代アート鑑賞のため各地を旅するうちに、郷土料理好きに。

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