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4年ぶりに開催の小豆島『肥土山農村歌舞伎』。伝統を継承すること、変わっていくこと

  • 2023年4月24日
  • コロカル
4年ぶりの開催となる伝統芸能

日に日に新緑がまぶしくなっていく季節。毎年この季節に開催されるのが小豆島の伝統行事『肥土山(ひとやま)農村歌舞伎』です。

肥土山農村歌舞伎舞台の周辺の新緑。毎年5月のこの景色はとても美しい。

肥土山農村歌舞伎舞台の周辺の新緑。毎年5月のこの景色はとても美しい。

2019年5月3日に開催されたのを最後に、もう4年も経ってしまいました。感染症の影響で世のなかからさまざまなイベントや行事がなくなった3年間。300年以上続いてきた農村歌舞伎もその影響を受け、この4年間は中止したり、規模を大幅に縮小したりして行ってきました。

2022年5月の肥土山農村歌舞伎は、序幕である「三番叟(さんばそう)」奉納のみ行いました。

2022年5月の肥土山農村歌舞伎は、序幕である「三番叟(さんばそう)」奉納のみ行いました。

農村歌舞伎というのは、豊作祈願と娯楽として昔から各集落で行われてきた行事です。そこで暮らす人々が企画し、演じ、楽しむイベント。小豆島でも昔は各集落に歌舞伎舞台があり、農村歌舞伎が行われていたそうですが、今では私たちが暮らす肥土山地区と、お隣の中山地区の2地区のみで開催されています。

山々に囲まれた美しい田園地帯にある肥土山農村歌舞伎舞台。

山々に囲まれた美しい田園地帯にある肥土山農村歌舞伎舞台。

行事というのは、定期的に続けていくことがとても大切なんだなとあらためて思いました。毎年続けていくと、上の歳の人から下の歳の人へ、やることが自然と引き継がれていきます。

たとえば、うちの娘は、小学生の間、子どもだけで演じる子ども歌舞伎に出演させてもらっていましたが、上級生の子たちに教えてもらいながら、演じ方や練習の仕方、大人へのあいさつなど学んできました。自分が上級生になったときには、下の子たちに教えてあげていたと思います。

親である私たちも、何をしたらいいのか、先輩お母さん、お父さんにいろいろと聞いていました。

小学生時代の娘・いろはは農村歌舞伎とともに成長してきました。歳を重ねるにつれてセリフが増え、難しい役になっていきました。

小学生時代の娘・いろはは農村歌舞伎とともに成長してきました。歳を重ねるにつれてセリフが増え、難しい役になっていきました。

会社ではないし、マニュアルなんてないんです。作法みたいなものは、なかなかマニュアル化しづらいですしね。地域の先輩方に聞きながら、教えてもらってやってきました。受け継いでいくってそういうことなんだなぁと。

先輩のお姉ちゃんたちと一緒に練習。たくさんのことを教えてもらいました。

先輩のお姉ちゃんたちと一緒に練習。たくさんのことを教えてもらいました。

昔から変わらない台本。ふりがなをうったり、区切りをつけたりして、読みやすく。

昔から変わらない台本。ふりがなをうったり、区切りをつけたりして、読みやすく。

新しいかたちをつくっていく

受け継いでいくこともあれば、この4年の休みを機に大きく変わることもあります。高齢化と人口減少により、農村歌舞伎の運営に関わる人が少しずつ減っていっています。これから先は少ない人数でも続けていけるやり方に変えていかないといけません。

これまでは、自治会内にある6つの組が順番に運営を担当してきましたが、ひとつの組で運営するには負担が大きすぎることから、今年から新たに立ち上げられた農村歌舞伎の運営委員会が運営を担当することに。各組の人たちは分担された役割をすることになりました。それと、これまで3つだった演目がひとつ減り、ふたつになりました。キックオフや打ち上げなどの大勢の集まりは減り、これまで主に女の人たちが担当してきたお弁当づくりもなくなりました。

来賓の方や関係者が食べるお弁当を地元のお母さんたちがつくってきました。美しい割子弁当。

来賓の方や関係者が食べるお弁当を地元のお母さんたちがつくってきました。美しい割子弁当。

化粧のリハーサル。役者も化粧をするのも地元で暮らす人たち。

化粧のリハーサル。役者も化粧をするのも地元で暮らす人たち。

なんだか、あれもこれもなくなってしまうとちょっとさみしいんですよね。農村歌舞伎があることで生まれた、地域の人同士のつながりだったり、ともに何かをする時間だったり、農村歌舞伎を見ながら食べる割子弁当という文化だったり、そういうものは直接的には不要かもしれないけど、個人的には残していきたいなと思っています。今後そういうことを調整しながら、新しいかたちをつくっていくことになるみたいです。

さて、そんなこんなで4年ぶりの肥土山農村歌舞伎。2023年5月3日に開催されます。農村歌舞伎は、地元の人による地元の人のための行事ということもあり、大々的に告知を行ってはいないのですが、もちろんウェルカムです!見に来てもらえたらうれしいです。ちなみに、たくちゃん(うちの旦那さん)も役者として出演します。お楽しみに。

〈肥土山農村歌舞伎〉日時:2023年5月3日(水・祝) 15:00開演 18:00終了予定場所:肥土山離宮八幡神社・農村歌舞伎舞台演目:第一幕 15:00頃『寿式三番叟(さんばそう)』

五穀豊穣を願う舞を奉納します。

五穀豊穣を願う舞を奉納します。

第二幕 16:00頃『青砥稿花紅彩画(あおとぞうし はなの にしきえ) 稲瀬川勢揃いの場』

地元の子どもたちだけで演じる歌舞伎です。今年は13人が出演します。

地元の子どもたちだけで演じる歌舞伎です。今年は13人が出演します。

第三幕 17:00頃『仮名手本忠臣蔵(かなてほんちゅうしんぐら) 六段目 勘平切腹場』

肥土山歌舞伎保存会を中心に地元の大人たちが演じます。

肥土山歌舞伎保存会を中心に地元の大人たちが演じます。

観覧についてのQ&A

肥土山農村歌舞伎の観覧について、よく聞かれることをQ&A形式でまとめておきます。

●観覧は無料ですか?無料です。途中から来て、途中で帰っても大丈夫です。気軽にお越しください。無料ですが、当日「御花」(ご祝儀)の受け付けはしています。応援していただけたらうれしいです。農村歌舞伎の運営に使わせていただきます。●席はありますか? 予約できますか?歌舞伎舞台の前にある段々になっている地面やそのまわりに座って見ます。特に椅子などがあるわけではなく、地面に直接座るので、敷きものなどがあるといいです。予約はできませんので、空いている場所をみつけてください。地元の人たち用に確保されたエリアもあるので、迷ったら関係者に聞いてみてください。

こんな感じで地べたに座って歌舞伎をみます。

こんな感じで地べたに座って歌舞伎をみます。

●観覧中に飲食OKですか?農村歌舞伎を見ながら食べたり飲んだりしてもちろんOKです。楽しみましょう。食べものや飲みものの販売は基本的にはしていないので、食べたい方は持参してください。地元の人たちは、割子弁当という木の箱につめたお弁当を持ってきて、ビールを飲みながらみたりします。●駐車場はありますか?アクティブ大鐸(大鐸公民館)前のグラウンドが駐車場になります。そこから美しい田園のなかを10分ほど歩いたところに歌舞伎舞台はあります。

駐車場からはこんな景色のなかを歩きます。

駐車場からはこんな景色のなかを歩きます。

●公共交通機関はありますか?路線バスの「肥土山」バス停より徒歩10分ですが、運行本数がとても少ないです。事前に時間をよく確認してご利用ください。本番にむけて、役者は練習を重ね、舞台の準備、衣装やかつらの準備、化粧のリハーサルなど、それぞれが自分たちの手で進めています。新緑が美しい5月3日、ぜひ肥土山農村歌舞伎舞台にお越しくださいね。お待ちしています。

information

肥土山農村歌舞伎

日時:2023年5月3日(水・祝) 15:00開演 18:00終了予定

場所:肥土山離宮八幡神社・農村歌舞伎舞台

住所:香川県小豆郡土庄町肥土山甲2303

writer profile

Hikari Mimura

三村ひかり

みむら・ひかり●愛知県生まれ。2012年瀬戸内海の小豆島へ家族で移住。島のなかでもコアな場所、地元の結束力が強く、昔ながらの伝統が残り続けている「肥土山(ひとやま)」という里山の集落で暮らす。移住後に夫と共同で「HOMEMAKERS」を立ちあげ、畑で野菜や果樹を育てながら、築120年の農村民家(自宅)を改装したカフェを週2日営業中。https://homemakers.jp/

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