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乙武洋匡は体育の授業をどう教えていた?「サッカーボール2個、ゴール4個」の衝撃ルール

  • 2025年6月16日
  • All About

3年間小学校の教員をしていた乙武洋匡さんが小学校教師時代に実践した、運動が苦手な子も楽しめる「特別ルール」の体育授業。その驚きの発想と、子どもたちの無限の可能性とは? ※サムネイル画像:PIXTA
3年間小学校の教員をしていた『五体不満足』の乙武洋匡さん。「手足がないのに、体育の授業はどうやって教えていたの?」と疑問に思う人も多いかもしれません。しかし、大切なのは先生が見本を見せることではないと言います。

『教育における「足りなさ」の重要性』(乙武 洋匡・渡辺 道治著)は、教師としての経験を持つ乙武洋匡さんと渡辺道治さんの対話の中で、「足りなさ」にフォーカスを当てた教育現場での実践ケースや感動のエピソードが語られます。

今回は本書から一部抜粋し、乙武さんが小学校教諭時代に実践していた、運動が苦手な子も得意な子も一緒に楽しめるユニークな「特別ルール」の体育授業についてのエピソードを紹介します。

■乙武さんは体育の授業をどう教えていたのか
そもそも、私は教員時代も体育の授業にはこだわりがありました。

それは自分自身がこうした体にもかかわらず、幼い頃から体を動かすのが大好きで、もちろんみんなと同じようにはできないのですが、自分なりに工夫をしたり、先生方も「乙武ならこのやり方があるんじゃないか」と考えながらご指導くださっていたりという経験をしてきたのが大きかったと思います。

こういう話をすると、「そもそも体育をどうやって教えていたんですか?」とよく聞かれるのですが、そんなに難しい話ではありません。

体育が得意な子はいっぱいるわけですから、鉄棒だったら鉄棒が得意な子に、水泳だったら水泳が得意な子に見本を見せてもらえばいいわけです。

本人が動ける必要はありません。

私の体育の授業は、学級会的な要素も大事にしていました。たとえば、サッカーという単元であれば、1回目はいわゆる普通のサッカーをやってもらいます。

そうすると、サッカーを習っているような運動の得意な男の子数人だけが活躍して、シュートも決めまくって終わったりします。そうすると、運動の苦手な男の子や女の子はつまらないわけです。

そこで、その日の帰りの会で、「今日、体育でサッカーやったよね。おもしろかった人?」と聞くと、その得意な男の子たちだけが手を挙げます。「つまらなかった人?」と聞くと、クラスの大半が手を挙げます。

この状況を見て、「じゃあどうする? これからサッカーは何時間か続くけど、同じルールでやる? それとも、みんなが楽しめるようにルールを変えた方がいいと思う?」と聞きます。

すると、「みんなが楽しめるルールにしたい」となるわけです。そして、翌日の学級会でみんなでルールを考えていきます。

すると、続々とおもしろいアイディアが生まれていきます。まず、ボールを2個にする。そうすると人が散らばる。次にゴールを4個にする。そうするとゴール前も人がばらけます。ボールが2個で、ゴールが4個になることで、ボールに触れる人も増えていきます。

■得意じゃなくても楽しめるルール
特に秀逸だったのは、赤白帽を用いたルールです。試合が始まるときには全員帽子を白にしておいて、シュートを決めた人は赤にしていく。赤になった子はその後にシュートを決めても得点はカウントされません。

そうすると、一番うまい子は今までなら最初から最後まで自分がバンバン決めちゃうのを、自分ではない子にパスを出してシュートを決めてもらおうとします。得意ではない子にもどんどんボールが回っていきます。

もちろん、このルールを考えたのは私ではありません。私は、「一人でも多くの子が『今日のサッカー楽しかった』と思えるルールづくりをしてね」とお題を投げただけです。

すると、子どもたちはここまで考えてくれるんです。子どもの力って本当にすごいなと思います。

バレーボールでも特殊なルールがありました。小学生がバレーボールをしても、なかなかまともなラリーになりません。そこで、各チームに一人だけ「キャッチマン」というポジションを置いてもいいことにしました。

プロの世界でも「リベロ」というポジションがありますが、チームで一人だけボールをキャッチしていいのです。キャッチマンは、ボールを掴んだ状態からトスを上げられるので、正確なボールが上がります。すると、小学生でもきちんとアタックができるようになります。

バレーボールの醍醐味はやはりアタックですから、こうした工夫をするだけで一気にみんなが試合を楽しめるようになるのです。

乙武洋匡(おとたけ ひろただ)プロフィール
1976年生まれ、東京都出身。早稲田大学政治経済学部卒。大学在学中に出版された『五体不満足』が 600 万部を超すベストセラーに。 卒業後はスポーツライターとして活動。その後、小学校教諭、東京都教育委員などを歴任。地域に根差した子育てを目指す「まちの保育園」の経営に参画。2018年からは義足プロジェクトに取り組み、国立競技場で117mの歩行を達成。ニュース番組でMCを務めるなど、日本のダイバーシティ分野におけるオピニオンリーダーとして活動している。

渡辺道治(わたなべ みちはる)プロフィール
2006年北海道教育大学卒。元小学校教員。2013年JICA教師海外研修にてカンボジアを訪問。2016年グローバル教育コンクール特別賞受賞。2017年北海道札幌市公立小学校にて勤務。国際理解教育論文にて東京海上日動より表彰。2019年ユネスコ中国政府招へいプログラムにて訪中。JICAの要請・支援を受けSDGs教材開発事業としてラオス・ベトナムを訪問。初等教育算数能力向上プロジェクト(PAAME)にてセネガルの教育支援に携わる。2022年から愛知県における新設私立小学校にて勤務。2023年からはアメリカ・ダラスにある学校「Japanese School of Dallas」の学習指導アドバイザーに就任。

乙武洋匡、渡辺道治

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